北村匠海、河合優実、窪田正孝、城定秀夫監督が映画『悪い夏』の公開記念舞台挨拶に登壇、「クズとワルしか出てこない」と話題を呼んだ傑作小説の映画化について語った。
満員御礼で迎えたこの日の映画上映後、観客からの大きな拍手に包まれてイベントはスタート。
まず作品を最初に観たときの感想を問われると、主人公の闇堕ち公務員・佐々木を演じた北村は「(登場人物たちが)非常に滑稽だったので、『面白かったです!』と監督にも伝えました」と充実した表情を浮かべながらコメント。
特に滑稽だった人物を問われると、「(竹原)ピストルさん(が演じた役)ですかね。もうどうしようもない人だなって」と即答。窪田演じる裏社会の住人・金本の手下の山田を演じた竹原ピストルの名を上げると、窪田もすかざず「ズルいよね!」と共感。

続いて育児放棄寸前のシングルマザー・林野愛美役の河合は、「脚本を読んだときも思いましたが、改めて観ても、ラストの展開で積み上げていったものが、全部はしごを外されてしまうような驚きがあった」といい「やっぱり笑っちゃう。笑っていいんだなって思いました」と作品を楽しんだ様子。
これを受け窪田も「笑っていいと思いますね」と同意し、「みんな“クズ”と“ワル”なんだけど、その中にもどこか美しさというか、美学というか、そういうのも感じました」と印象を振り返った。
城定は「これだけの実力をもつ俳優陣を前に僕は何をすればいいんだろうという気持ちで撮影してました」と撮影中の思いを明かし、すかさず北村と窪田からは「ずっとニヤニヤしていましたよ!一番悪い顔をしてましたよね!」と思わぬ暴露を受けるも、「モニターを見ていて楽しかったです」とキャストへの全幅の信頼をうかがわせた。
■北村匠海「どれだけ暴れてもいいやっていう感覚もあった」

北村の闇堕ちぶりに、原作者の染井為人も絶賛したという本作。そんな北村は佐々木という役に対して、いままで演じてきたヤンキーの役柄の方が自分とかけ離れている感覚があったといい、「自分が持ってる一番奥の方にある引き出しを久々に開けるみたいな感覚。思いのままに演じさせてもらって楽しかったです」と語る。
そしてワルの道へと転落した佐々木の感情が爆発する独白シーンについて話が及ぶと、なんとこのシーンは撮影開始2日目に撮ったという。「どれだけ暴れてもいいやっていう感覚もあったので、自由に演じさせてもらいました。貧乏ゆすりを高速でしてくれって言われたときは、どうやるんだろうと…(笑)」と、城定監督からのユニークな演出に苦戦(?)したひと幕も明かした。
佐々木を犯罪へ巻き込んでいく愛美役を演じた河合は「どちらかというと巻き込まれる側でいたい」という思いがあったそう。愛美のヤンキー風の佇まいは衣装もこだわったそうで「バッグとかも雑誌の付録でもらったようなものを用意してもらった」とキャラクターを作りあげていく過程がとても楽しかったとふり返った。
窪田は現場で様々なアイデアを出したそうで「どうやったら、本当に人の心を不愉快にさせられるか、ずっと考えていました」と役作りを真面目に語るも、北村が「不愉快でした…」とつぶやくと、会場からは笑いが。
■「『悪い夏』と出会って、久々にワクワクする映画作り」
続いて、話題は本作の大きな見どころとなる、クライマックスの嵐の中の狂騒シーンへ。あまりのカオスっぷりに“思わず笑ってしまった”という感想が続出しているが、窪田は「本当にもしあったら、『みんな一旦、(家の)中に入らない?』ってならないかな?(笑)」とコメント。
北村は「中も狭かったよね」と返すと城定監督からは、「当初の台本では家の中だけで完結させていたけれど、狭かったため外に出ることになって」と現場で演出を変えたという。ずぶ濡れ&泥まみれの外での撮影はとにかく寒かったそうで、河合は「窪田さんが見たことないくらい震えて、一言も喋らなくなってて怖かったです」と笑いを交えて振り返り、過酷な撮影現場での思い出話が広がった。
また、本作のキャッチコピー“公務員、闇堕ち”にちなんで、自分が「○○堕ちしている」というほどハマっているモノをフリップに書いて発表する場面では、河合が【ルービックキューブ】と回答し「今時あんまりやってる人いないじゃないですか…」とはにかんだ。マネージャーに勧められたことがきっかけだったそうで、腕前はメキメキ上達し「3分以内で6面揃えられます!」と明かすひと幕も



そして、舞台挨拶もあっと言う間に終了の時刻に。最後に城定監督は「笑ってもいいし、泣いてもいいし、エンタメの要素をいろいろ詰め込みました。みんなに楽しんでもらえたらいいなと、そういう映画にしました」と作品をアピール。
窪田は「映画が大好きで、その中でこうやって映画館に皆さん足を運んでいる光景を見れるだけで僕はすごく幸せ」と集まった観客への感謝を告げると「(作品に)嫌悪感を抱いたとしても、何かそこに美しさというか、違和感みたいなものを教えてくれる。その違和感が実は美しいものということをこの映画で僕は感じさせてもらいました」と熱い気持ちを伝えた。
河合は「この作品を観て、観る前には抱かなかったような気持ちになってくれたら、私たちもすごく嬉しい。ぜひ周りの方と感想を語り合っていただけたらなと思います」と続け、最後に北村は「本当に映画が大好きです。その中で『悪い夏』と出会って、久々にワクワクする映画作りだなと思いました。この映画を盛り上げるためにもみんなで感想を共有していけたら、映画のあり方がすごく広がるのかなって思います」と力強く語っていた。
『悪い夏』は全国にて公開中。