先日の第97回アカデミー賞で作品賞をはじめ最多5部門を受賞し、日本でもヒット中の『ANORA アノーラ』。今回のアカデミー賞で最も混戦が予想された主演女優賞を初ノミネートで見事獲得したのは、1999年生まれの新進俳優マイキー・マディソン。彼女をはじめ、この春、あまりに強烈で忘れられない熱演を見せる俳優5人に迫った。
マイキー・マディソン『ANORA アノーラ』

ニューヨークのストリップクラブで働くロシア系アメリカ人のアニーことアノーラが、ロシア新興財閥の御曹司の“契約彼女”になり、勢いのままにラスベガスで結婚。その後に訪れる、自分の人生のための奮闘を描く現代のアンチ・シンデレラストーリー。
監督のショーン・ベイカーは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と『スクリーム』(2022)を見てマイキー・マディソンをアニー役に起用し、ほぼ当て書き。
これら過去作ではとんでもない目に遭っている彼女だが、今作でも相手がロシアの財閥だろうが判事だろうが、常にはっきりと自己主張し、絶対にめげない、諦めない。

そんなアニーをいつの間にか応援したくなるのは、マイキー・マディソンが演じたからこそ。ロシア語やポールダンスも含めたレッスンのほか、役作りに際して協力を得たセックスワーカーのコミュニティに敬意を表し、支援と連帯を示した受賞スピーチも印象的だった。
『ANORA アノーラ』は全国にて公開中。
●マイキー・マディソンをさらに知る1作「ベター・シングス」
ディズニープラスにて配信中
ハリウッドで暮らす女優でシングルマザーのサム(パメラ・アドロン)が育てている3姉妹の長女、マックスを最終シーズン5まで演じた。母親を翻弄しながら、次女フランキー、三女デュークの世話を焼きながら成長していく反抗期真っ只中のティーンエイジャーだ。
レイチェル・ゼグラー『白雪姫』

1937年に発表されてから今日に至るまで愛され続けているディズニープリンセスを、新たなミュージカル版として実写化。『白雪姫』のタイトルロールを演じるのは、スティーヴン・スピルバーグ監督作『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)で3万人のオーディションを勝ち抜き、映画デビューを飾ったレイチェル・ゼグラー。
ヴィランである外見の美しさと権力に執着する邪悪な女王を『ワンダーウーマン』のガル・ガドットが演じ、『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督がメガホンをとっていることでも話題だ。
雪のように純粋な心を持つ白雪姫を、ときに愛らしく、ときに力強く演じ切る次世代俳優レイチェル・ゼグラーは、その伸びやかな歌声も相まってさらに注目を集めること必至。
『白雪姫』は3月20日(木・祝)より全国にて公開。
●レイチェル・ゼグラーをさらに知る1作『ハンガー・ゲーム0』
Amazon Prime Videoほかにて配信中
世界的ヒットシリーズ『ハンガー・ゲーム』1作目の64年前を舞台にした前日譚。スノー大統領の青年時代(トム・ブライス)の運命を変えてしまう、ジェニファー・ローレンス演じるカットニスとはまた違う魅力を持ちながらも繋がりを感じさせるルーシー・グレイを演じた。歌詞を心に留めながら、その歌声に耳を澄ませてみて。
セレーナ・ゴメス『エミリア・ペレス』

アカデミー賞で“非英語映画”として最多の12部門13ノミネート、助演女優賞(ゾーイ・サルダナ)と歌曲賞(「El Mal」)の2部門を受賞した『エミリア・ペレス』。
ジャック・オーディアール監督が、女性として生きる元麻薬王と彼女との出会いで運命が動き出す女性たちを描いた、クライムサスペンスでありミュージカルであるジャンルをまたぐエンターテインメント作品。

第77回カンヌ国際映画祭で審査員長と女優賞(アドリアナ・ラパス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコンと4名で)に選ばれたものの、アカデミー賞には惜しくもノミネートされなかったセレーナ・ゴメス。
だが、歌曲賞受賞の「El Mal」がゾーイ・サルダナ演じる弁護士リタの歌なら、同賞ノミネートの「Mi Camino」はセレーナ・ゴメス演じるジェシーのための歌。軽やかに、自由に歌い踊り、麻薬王の妻として窮屈な生活を強いられている現在、そして未来を暗示させる楽曲で、彼女は俳優として再注目されるはず。
『エミリア・ペレス』は3月28日(金)より全国にて公開。
●セレーナ・ゴメスをさらに知る1作「マーダーズ・イン・ビルディング」
ディズニープラスにて配信中
コメディ俳優スティーブ・マーティン、マーティン・ショートの“Wマーティン”と共演、N.Y.アッパー・ウェストサイドの高級マンションで巻き起こる殺人事件を一緒に探っていく、実録犯罪マニアの1人メイベルを演じる。謎解きとコメディのさじ加減が絶妙で、名優コンビと見事な掛け合いを見せる。シーズン4ではL.A.が舞台に。
ナオミ・アッキー『ミッキー17』

何度でも生まれ変わる“使い捨て(エクスペンダブル)”の仕事に就いたミッキー(ロバート・パティンソン)。身勝手で強欲な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返り、ついに17号となったミッキーの前に、ある日手違いで自分のコピー・18号が現れ、事態は一変する…。
『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督の最新作で、賛否を巻き起こしている『ミッキー17』。そんなミッキーの恋人でソウルメイトであるパワフルな女性ナーシャを演じているのが、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』にジャナ役で出演したナオミ・アッキーだ。
ナーシャはミッキーが18号になっても(?)彼を愛し続けている女性で、武術に長けたエリート警備員。『パラサイト』『スノーピアサー』『Okja/オクジャ』から少しもブレてないポン・ジュノ監督が太鼓判を押すキーパーソンを熱演する。
『ミッキー17』は3月28日(金)より全国にて公開。
●ナオミ・アッキーをさらに知る1作『ブリンク・トゥワイス』
Amazon Prime Videoにて配信中
ゾーイ・クラヴィッツが初監督・共同脚本を手がけたシチュエーション・サイコスリラー。IT業界の大富豪スレイター(チャニング・テイタム)と出会ったフリーダ(ナオミ・アッキー)は、友人と彼のプライベートアイランドへ。夢のような時間を過ごしていたが…。ゾーイ・クラヴィッツの映像&音楽センスが光る中、フィクションには思えない運命に抗おうとするナオミ・アッキーらの連帯は必見。
マーガレット・クアリー『サブスタンス』

50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス(デミ・ムーア)は、怪しげな再生医療“サブスタンス”に手を出す。その<治療薬>を注射すると、エリザベスの背中から若い分身“スー”が現れ、スーは瞬く間にスターダムを駆け上っていく。
コラリー・ファルジャ監督・脚本の『サブスタンス』では、キャリアの危機を迎え、美と若さに執着するあまりスーに“吸い取られていく”エリザベスを熱演したデミ・ムーアはもちろん、その分身であり、弾けるような若さとピュアネスを纏うスー役のマーガレット・クアリーも大きな話題となるはず。

上述の『ANORA アノーラ』マイキー・マディソンをはじめ新鋭が多数出演した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のヒッピー集団で、“プッシーキャット”として印象を残したマーガレット・クアリー。今作で体現する作為的な誘惑の果てからは、目を背けることなどできない。
『サブスタンス』は5月16日(金)より全国にて公開。
●マーガレット・クアリーをさらに知る1作「メイドの手帖」
Netflixにて配信中
ヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』『憐れみの3章』でも知られるが、おすすめはセレブの世界と対極にいる今作。DV夫から逃れ、頼るところもない若い母親アレックスは豪邸の掃除をするメイドの仕事と育児に疲れ果てても、生きるために書き続ける。実母である俳優アンディ・マクダウェルが母親役を演じた。