観た方が自分なりにジャンルを見つける作品
――完成版を観てどう思われましたか?
自分で演じたものなのに、自分じゃないような感じもするし、すごく不思議な感覚を覚えました(笑)。確かに自分で演じたんだけれども、当時のことをあまり詳しく思い出せないというか、覚えてないというか。本当に必死すぎたんですね。
――グロテスクな表現で人間の闇の部分を描きつつ、その中から人間の強さや美しさ自由さのようなものが描かれていた気がします。狂気的な演技に気持ちを持っていくのが大変だったとのことですが、どのような心構えで演じていらしたのでしょうか。
原作にもあるアラタの「寂しいから一緒に生きてほしいってだけなんだ」というセリフが印象に残って。誰かを好きになるのって、すごくシンプルなことでいいのかなという思いが頭の片隅にありました。だから、ただこの人と向き合う、ちゃんと人と人として会話する、そういう部分を意識していました。
アラタに向き合う気持ちを常に心のどこかに持っていれば、言葉や態度で彼を翻弄したり、嘘を言ったり、言葉がめちゃくちゃでも、成立すると信じて演じていました。

――アラタを翻弄するのも彼と向き合いたいがための、真珠なりの多彩なアプローチであると捉えていらしたということですね。
そうですね。でも、全く知らない死刑囚の真珠に、いきなり結婚しようなんて、アラタはよくあの一言が言えたなと思いますね。普通に覚悟がいりますよね。怖いし。獄中結婚するなんてアラタはすごいなと思いました。でも、2人にしかわからないことがいっぱいあるでしょうね。
――様々な要素が入り交じった本作はジャンルを特定できない作品という印象があります。黒島さんなら、本作をどのように表現しますか?
難しいですよね。私もこの映画を何て表現したらいいのかわからなくて。新ジャンルっていうジャンルです(笑)。サスペンス要素あり、エンタメ要素あり、恋愛要素もある。ある人がサスペンスとホラーとラブストーリーの造語で、“サホストーリー”って言っていて、それは確かに新ジャンルに聞こえるけれど、ただ覚えられない(笑)。観た方それぞれが自分なりにジャンルを見つけていただく、そんな作品だと思います。

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