シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデの主演で不朽の名作ミュージカルを映画化した『ウィキッドふたりの魔女』が、ついに日本公開。
この度、メガホンをとったジョン・M・チュウ監督と、“ふたりの魔女”エルファバ&グリンダに関わるフィエロ役を演じたジョナサン・ベイリーのインタビューがシネマカフェに到着。2人が本作に込めた思いや、シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデとの仕事について語った。

不朽のミュージカルとして愛され続けている「ウィキッド」をスクリーンへ見事に昇華させたのは、アジア系キャストが大集結した『クレイジー・リッチ!』や、同じく名作ミュージカルの映画化『イン・ザ・ハイツ』などを手掛けてきたジョン・M・チュウ監督。

コロナ禍に監督をつとめることが決定したジョン・M・チュウ監督は「とても興奮しました」とふり返りながら、「『Defying Gravity』の中で、エルファバが『私の中で何かが変わった。何かが同じじゃない』と言う瞬間があるんです。その部分が、僕にとってとても違う形で響きました」と話す。「コロナとロックダウンの後、全世界がこのように感じていたと思います。そして、僕たちは転換期を迎えるんです」と、いまこそ、この映画を作る必要があったと語る。
一方、ジョナサン・ベイリーは監督が「とても多くの絵コンテやアイデア、テーマを見せてくれました」と言い、「ジョンのような人に招待されて、『よし、これ以上いいことはない』と思ったんです。そしていま僕たちはここにいます。(作品が)進むにつれ、どんどん素敵なことになっているんです」と本作に参加した喜びを露わにした。

「自分の直感が『ウィキッド』で何を見たいか分かっていた」
監督にとって大ヒットミュージカルを映画化する上で最大のチャレンジは何だったか尋ねてみると、「僕は初日から怖かったんです、間違いなく」としながらも「でも、この作品がどうあるべきかは分かっていました。自分の直感が『ウィキッド』の映画で何を見たいか分かっていました」と話す。
「黄色いレンガ道を行くように(みんなで)腕組みをしないといけないんです。そして、その途中で恐れを解決できると信じるんです。でも、だからこそ適切な人材を雇うんです。同じように考えている、あるいは、みんなが協力できる新しい方法で考えている適切な人たちを雇うんです。だから、そういったことはとてもエキサイティングでした」と力強く語る。

そんな監督が「実際に呼ぶのは怖かった」と明かしたのが、エルファバとグリンダという世界中に愛されているふたりの魔女を演じることになるシンシア・エリヴォとアリアナ・グランデのキャスティングだ。
オーディションで「シンシアがTシャツにジーンズ姿で入ってきて、『The Wizard and I』を歌った瞬間、僕は、寮の部屋で映画監督になることを夢見ていた頃の自分を見たような気がしました。僕は『彼女は本作を分かっている』と思いました。これは世界中で公開され、人々はエルファバを新しい形で理解することになるんです」と、感慨深げに語る監督。

そして「彼女自身が巨大なブランド」と表したアリアナ・グランデについても、「彼女はそのすべてを無にして、本物のグリンダになったんです。僕は本物のグリンダに会ったような気がしたんです」と尊敬を持ってふり返った。

「だから本当に楽しかった。そして、僕たち全員が絆を深められたのは、誰もが自分の役割をよく理解していて、実際、セットに入ったら、常に(芝居を)いろいろ試していたからだと思います。多くの信頼があったからこそ、この映画にある特別な魔法を可能にしてくれたんだと思います」。
「彼女たちの素晴らしい演技を観察し、それによって導いてもらった」
ジョナサン・ベイリーはウィンキー国の王子フィエロを演じることについて、「アリ(シア)とシンシアと素晴らしい演技をする、(彼らを)サポートする素晴らしい機会だと思いました」と話す。
「フィエロの成長を明示し、彼の背後にある人間性を理解することは、観客がエルファバに起こっていることを理解する助けになると感じました。なぜなら彼は、ある部分において、グリンダとエルファバの鏡のような存在だと思うからです」と彼は言う。

「エルファバが人々に与える影響は、この映画を通してフィエロの成長に如実に表れていると思います。だから僕は、ある瞬間が(エルファバの影響とフィエロの成長が)本当に一致するようにしたかったんです。そして、ジョンと一緒にいることで、そういったことはとても簡単になりました。彼の導きのおかげで」と続けた。

「彼女たちとはあまり話しませんでした」とジョナサン・ベイリーは言う。「僕は撮影に少し遅れて参加したので、彼女たちの素晴らしい演技を観察し、それによって導いてもらうという恩恵を受けました。そして、そういった(相手の演技を見てそれに影響を受ける)ところに(この役の)演技があるんだと思います」と、ふたりの魔女と関わりながら自身も変化していく役どころに重ねて分析した。
キャラクターに命を吹き込む、リアルで壮大なセットの意義
また、本作の魅力の1つには、アカデミー賞美術賞にも輝いた圧倒的スケールかつ、精巧な素晴らしいセットがある。
「想像しうる映画における最大のスペクタクルを作りたかったんです。『ベン・ハー』や『アラビアのロレンス』のような、昔の映画が作られているようにしたかった」と監督は言い、「それで僕たちは900万本のチューリップを植えたんです。巨大な(オズの)頭や、60トンの列車を作ったんです。そしてそういったことが実際にその空間で生活したり、キャラクターたちに命を吹き込むことをさせてくれました」と語る。

「というのも、最終的には、すべてのスペクタクルやダンスや音楽の中心にはーーそういったことは本当に楽しいし、素晴らしい時間を過ごしますがーーその全ての中心には、真の感情があるんです。ニュアンスがあって、混沌としているんです。そして、その混沌としたものを信じるためには、ここがリアルな場所だと信じる必要があるんです。だから、土は触れられるものでなければならないし、柱には傷がなければいけない。そして衣装には傷みが必要なんです。だから僕たちは常にそのことを考えていました」と明かした。

こうした監督の世界観づくりについて、ジョナサン・ベイリーも「細部まで考え抜かれていて、その世界を実現するための配慮が行き届いていました」と語り、キャラクターのアプローチに明らかな影響を与えたという。
実際に、フィエロが歌い踊る「Dancing Through Life」のパフォーマンスシーンも、本を蹴ったり、本の上を滑ったり…彼の背後で宙返りする人がいたりと「全てが本物でした」とふり返る。
加えて特別なシーンとして、ジョナサン・ベイリーは仔ライオンを逃がすシーンを挙げた。「フィエロにとって、最大の見せ場ですよね? そして、観客にとって、エルファバが人々に与える影響を見るところなんです。そこでは、彼女がはっきりと彼を見抜き、彼が初めて挑戦を受けていると感じるんです。それは(観客が)見つけるべき重要な瞬間だと感じました。でも、そのために僕たちは2日間費やしました。それはただただ喜びでした。神秘的な森の中にいて、そこからとても大事な(2人の)始まりを演じられたのは本当に特別なことでした」と明かした。

最後に日本の観客へのメッセージをお願いすると、ジョナサン・ベイリーは「この素晴らしい映画体験は、あなたたちを離れがたい世界へといざないます。そして、力強い演技とこの人ジョン・チュウによる見事な演出があります」と監督を称え、「これは、初めて映画館に足を運んだときの感動を思い出させてくれる、ノックアウトされる(素晴らしさに圧倒される)映画です」とアピール。
そして監督は、「もし映画を観に行って別の場所に連れて行かれたり、すべての音楽やダンスの感動と喜びを満喫して爽快になったり、息を呑んだり、恋に落ちて、そして最後に実際、その暗闇から出て光の中に入って、家に帰るのであれば、僕にとっては、それこそが誰もが頭の中で想像する映画体験であり、子どもの頃に経験したことなんです。そして僕たちは、『ウィキッド』でそのような体験をするために、人々が映画館に戻ってくることを願っています」と言葉に力を込めて語っていた。
『ウィキッド ふたりの魔女』は全国にて公開中。