謎の男・薬売りがモノノ怪を鎮めるために奮闘する人気シリーズ『モノノ怪』。3月14日（金）からは『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』がいよいよ全国にて公開を迎える。
全三章構成となるうちの第一章『劇場版モノノ怪 唐傘』に続く第二章でも、舞台は引き続き大奥。規律と均衡を重んじる御年寄・大友ボタンに対し、天子の寵愛を一身に受ける町人出身・叩き上げの御中臈フキは不満が募り一触即発状態。
そんなある日、人体発火事件が連続して発生。薬売りは謎を解き、モノノ怪を斬るため三様【形・真・理】を突き止めるべく、大奥へと足を踏み入れる。
ファン待望の本作を、横澤夏子が一足早く鑑賞。横澤といえば、軽快なおしゃべりが持ち味のイメージだが、そこには人間を俯瞰で分析する鋭い観察眼が見え隠れする。「大奥」大好き、さらに「人間関係の裏側考察」も大好きという横澤から見た『火鼠』の魅力について、ノンストップで語りつくしてもらった。
――『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』をご覧になり、いかがでしたか？
めっちゃ面白かったです。初めて「モノノ怪」シリーズを拝見したんですけど、もともと大奥もドロドロ系も大好きなので、第一印象から「面白そう！」とピンときました。
アニメーションの画もすごくキレイで、きらびやかなところが大奥にぴったりですよね。サッサッとテンポよく場面転換するので、「え、もっと見たい」と思うくらい天井からふすま、廊下、何から何までゴージャスで、地味なところが1か所もない！ 観ているだけですごく満足感がありましたし、圧倒されました。
――物語のどのようなところに、横澤さんは惹きつけられたのでしょうか？
キャラクターの個性が一人一人立っていて、人間模様から目が離せなかったです。それぞれの生い立ちも気になりましたし、役職において背負っているものも違ったりして。
難しい内容かなと思いきや、案外、現代にも通じるところがあるんだなと観ていて思いました。仕事でも家庭でも、皆さん任されている内容が違うので、背負っているプレッシャーも違いますよね。「気持ちがわかるなあ」と思いました。
――横澤さんご自身とも、ちょっと重なるようなところがあると？
そうなんです。キャラクターで言うと、私はフキの身の回りの世話をしてくれている女中のツユさんですね！ フキを支えながら、言いたいことも言っていて。内心納得いかないところもありながら、「大奥ではうまく取り繕ってます」という顔をして、乱したくないところも似てる。…とは言いながら、フキの気持ちも分かるんですよねえ。
――横澤さんは著書「追い込み婚のすべて」でも女性を分析する鋭い視点を発揮していました。作品を観るときでも、いろいろな人間の立場がわかりそうですよね。
え、だからなんですかね！？ すごく面白かったんです。この大奥という女の世界に、社会や人間関係がすごく詰まっているじゃないですか。「こう思えば、違うように思う人もいるよね」という縮図なので、本当は何を考えているんだろうと裏を見たくなっちゃうんです。
キャラクターで言うと、御年寄になったボタンは、いろいろな人のことを考えてルールを発表するじゃないですか。誰かしらが発していかないと変わらないものがあることは現代にもすごく通じますけど、ボタンの仕切る感じ、上り詰めた感じも好きなんです。とにかく格好よくて痺れました。
――一方で、フキの気持ちも分かると？
そりゃそうです～！ だって、天子に見初められるなんて、めちゃくちゃうれしい！ それに、寵愛を受けることで調子に乗るというか（笑）、ちょっと自信がついてくるところもあるあるだと思う、わかるんですよね。
わかるといえば、老中大友…何もしゃべらなくても悪いとわかる（笑）。欲望にすべて取り憑かれているという、ああいう人もいますよね！？私だって大友の部分、持っていますから。
――本作の主人公である、薬売りの印象はいかがでしたか？
（スマホのメモを見て）「薬売り大好き！」と書いてます（笑）。めっちゃよかったです！
私からしたら「薬売りって一体何者…」というミステリアスな第一印象から入ったんです。そうしたら「形」「真」「理」でモノノ怪の思考回路を見せてくれて、退魔の剣で斬って救ってくれるわけじゃないですか。かっこよくて、現実でも本当にいてくれたらいいのになと思っちゃう。
気持ちが病んでしまうときや、もやもやしているとき、薬売りさえいたらすべて浄化してくれるんじゃないかと思えるほど、頼れる存在ですね。一家に一人いてほしいです！
――終盤で火鼠の「理」が示されたときは、どのような気持ちになりましたか？
実はそこが一番語りたくなる部分なんですよね。一言で言うなら…すっごく切なかったです。
大奥はやっぱり「お世継ぎ」の話じゃないですか。今の時代だと自分のことだけを考え行動すればいいかもしれないけど、あの世界では「この時代を作る」という考え方でお世継ぎを生む、もしくはある意味の決意を迫られるわけで。火鼠が生まれた物語の背景や心情には、「そりゃ火鼠になるわ！」と共感しましたね。
そして、そんな思いをわかってくれる、受け継いでくれる人がいる事がわかるので、最後はすっきりしました。
――最後に、横澤さんは『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』をどんな方にお勧めしたいですか？
大奥やドロドロ好きな方はもちろん、人間関係に疲れた人、今の現実から離れてちょっと別世界を観たいと思う方にもお勧めしたいです。
あとは単純に、映像美に癒されるところがすごくありました。万華鏡の中を覗いているような気持ちになれるというか、小さいときに千代紙を見たときの「うわー、キレイ！」みたいな懐かしい、テンションが上がる気持ちになれます！
…実は『火鼠』を観た後に、アサが気になって『唐傘』も遡って観たくらいハマりました（笑）。第二章から観ても楽しめるのでお勧めです！
『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』公式サイト
あらすじ
モノノ怪・唐傘との壮絶な戦いから程なくして、再び大奥に現れた薬売り。その大奥内では、先の事件の余波で変化が生じていた。総取締役だった歌山の後任となった名家の出身・大友ボタンは、規律と均衡を重んじて厳格な采配を振るう。その結果、天子の寵愛を一身に受ける叩き上げの御中臈・フキとの間に亀裂が生じ、両者の溝は深まるばかり。天子の正室である御台所の幸子が産んだ赤子の後見人選定が進む中、フキに訪れる状況を一変させる大きな事態。その結果、ボタンの父親である大友への忖度のため追い立てられた男たちの策謀がフキへと迫る。
錯綜する思惑、やがて暴走する“火消し”の策略。時を同じくして、突如として人が燃え上がり、消し炭と化す人体発火事件が連続して発生。モノノ怪の仕業とにらんだ薬売りは事態を収めようとするが、群れで行動し、神出鬼没の怪異に手を焼く。薬売りはモノノ怪を斬るため三様【形・真・理】を突き止めるべく大奥に巣食う闇へと足を踏み入れていく。
