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デジタル撮影が映画界の主流になった現在でも、あえてフィルムでの撮影にこだわる作家性を放つ監督は数多い。スティーブン・スピルバーグ、クリストファー・ノーラン、クエンティン・タランティーノ、ポール・トーマス・アンダーソンら、名だたる映像作家がフィルムを後世に残す活動に力を注いでいる。
本作のグザヴィエ・ドラン監督も、「デジタルで撮影することはない」と語るほどの圧倒的なフィルム派。今回は、本作と共にぜひチェックしておきたい、フィルムならではの質感を堪能できる作品に迫った。
『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』35mmと65mmを併用して追求した圧倒的映像美
カンヌ国際映画祭審査委員賞を受賞した『Mommy/マミー』ではInstagramのような正方形の画面が、あるシーンで一気に広がりを見せるなど、独自の映像へのこだわりで知られるドラン。
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ドラン史上最大規模の大作となった本作では、過去に使用していた35mmフィルムに加え、いまではめったに使用されることがない65mmフィルムを使って撮影に臨んだという。自らファインダーを覗き、撮影構図を決定し、撮影監督が担当する仕事の大部分を自らこなし、究極の質感を求めて65mmフィルムが誇る圧倒的映像美に酔いしれる傑作を完成させた。
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「費用がかかろうが日程が伸びようが、ドランの納得がいくまで同じシーンを撮り続けた」と撮影監督が証言するほど。ドランがフィルムならではの質感にこだわった、同じ孤独を抱えたスター、ジョン・F・ドノヴァンと少年ルパートの文通を巡る物語には、どこか懐かしさが漂うヴィンテージな雰囲気が醸し出されている。また、大規模な予算をかけた65mmフィルムのシーンでは、映像美が光り、まさにスクリーンで堪能すべき1作となっている。
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『君の名前で僕を呼んで』北イタリアの避暑地が35mmフィルムで絵画のように
1980年代の北イタリア、17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)が大学教授の父が招いた大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)と出会い、激しい恋に落ちるが、夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づいてきて――。
全編1種類の35mmフィルムで撮影した『君の名前で僕を呼んで』(2017)。極力自然光を生かし、フィルムの質感を最大限に活かすことを目的として撮影は進められた。フィルムで切り取られた、夏のまばゆい太陽がきらめく中のエリオとオリヴァーの姿はまるで絵画のような美しさ。太陽の光が眩しい北イタリア、何ひとつ忘れられない恋は、きめの細かい35mmフィルムによる映像にマッチ。
『キャロル』16mmフィルムで映し出される映画史に刻まれる出会い
1952年ニューヨークの高級デパート。娘へのクリスマスプレゼントを探すキャロル(ケイト・ブランシェット)に、テレーズ(ルーニー・マーラ)はひと目で心を奪われ……。
カンヌやアカデミー賞をはじめ、多くの映画批評家から絶賛された美しい愛の名作『キャロル』(2015)は、物語の舞台となった1950年代初期当時の空気感を再現するため、荒い粒子が特徴の16mmフィルムで撮影された。衣装やセットも、当時使われていた色合いのみ使用する徹底的ぶり。自然主義的なアプローチを取ることで、観る者が50年代に飛び込んだような感覚になるほど、物語の世界観にのめり込ませることに成功した。
『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』は3月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。