実力派女性監督として近年良作を連発していたソルヴェイグ・アンスパッシュ監督は、54歳の若さで昨年他界してしまいました。カリン・ヴィアールと組んだ『Haut les coeurs!』や『素顔のルル』など、前向きで力強い作風が特徴で、現代が必要とする才能だったはずです。無念。今回上映の『The Aquatic Effect』が遺作となってしまいました。
セバスチャン・リフシッツという監督を僕は寡聞にして知らなかったのですが、調べてみるとクレール・ドゥニの弟子筋のようですね。会話よりも肉体を重視する作家で、セクシャリティをテーマにした作品を多く手掛けています。今作『Les Vies de Therese』は、今年の2月に亡くなった、フェミストで活動家のテレーズ・クレールという女性の最後の日々をカメラに収めたもののようです。
ラシッド・ジャイダニ監督は、長編1本目の前作『Hold Back』(’12)も「監督週間」に出品されて、国際批評家連盟賞を受賞しています。今作『Tour de France』はジェラール・ドパルドューを主演に迎え、ドパルデューと20歳の若いラッパー青年との交流を描くロードムービー、みたいです。世代や文化の衝突を乗り越えた年の離れたバディー・ムービーかな? だとしたら面白そう。
もうひとりイタリアから、ヴィルツィより少し若手のクラウディオ・ジョヴァンネージ監督。『Ali Blue Eyes』(’12)がローマ映画祭の新人賞を受賞しています。同作品は『青い眼のアリー』というタイトルで「映画で旅するイタリア」企画の中の1本として2015年に東京でも上映されていますね。今作『Fiore』は、ティーン犯罪もののよう。イタリア期待の才能、チェックせねば。
デンマークとクレジットされている『Wolf and Sheep』のシャールバヌー・サダット監督は、アフガン出身の女性のようです。前作が共同監督だったようで、単独監督としてはこれが1作目になるみたい。アフガニスタン北部の山に暮らす羊飼いたちの暮らしを描くドラマで、「女性の魂を吸い取ってしまう2足歩行の狼の伝説が生きる場所」、という映画の説明に興味が止まらない。これは絶対見る。
カナダのケベック出身のキム・グエン監督は、日本でも劇場公開された『魔女と呼ばれた少女』(’12)がベルリンのコンペで主演女優賞を受賞して、一気に注目を浴びた存在です。『魔女と呼ばれた少女』は、アフリカを舞台にした厳しいリアリズムの映画でしたが、今作『Two Lovers and a Bear』は北極近くの小さい町を舞台にした若い男女の話のようで、全く雰囲気が違うみたい。いや、子どもたちや若者が主役となるという点では共通するのかな…。んー、これも見たい。
そしてインドからは、世界の映画祭に出品が相次ぐアヌラーグ・カシュヤプ監督。『Gangs of Wasseypur』(’12)が話題になり、『Ugly』(’13)がカンヌ「監督週間」に入りました。2作続けての「監督週間」ですが、今作では60年代を舞台にムンバイのシリアル・キラーを描くとのこと。ビジュアルもなかなか強烈なので、期待できそうです。