ご案内の通り、最高賞のパルムドールはケン・ローチ監督『I, Daniel Blake』が受賞しました。僕は事前の予想にこそ挙げませんでしたが、ふり返ってみると文句の無い受賞ではあります。芯の通った社会派であり、巨匠ケン・ローチの面目躍如的秀作であることから、審査員としても妥結しやすい授賞だったのだろうと想像します。
・パルムドール(1等賞):ケン・ローチ監督『I, Daniel Blake』 ・グランプリ(2等賞):グザヴィエ・ドラン監督『It’s only the end of the world』 ・審査員賞(3等賞):アンドレア・アーノルド監督『American Honey』 ・監督賞:クリスチャン・ムンジウ監督(『The Graduation』)、オリヴィエ・アサイアス監督(『Personal Shopper』)ダブル受賞 ・主演女優賞:ジャクリン・ホセ(『Ma’ Rosa』ブリランテ・メンドーサ監督) ・主演男優賞:シャハブ・ホセイニ(『The Salesman』アスガー・ファルハディ監督) ・脚本賞:『The Salesman』(アスガー・ファルハディ監督)
今年の全体的な特徴のひとつに、女性が映画の中心となる作品が多かったことがあげられます。コンペ21本中、女性が大主役であった作品は、『Toni Erdmann』(上述のドイツ映画で娘役が主役のひとり)、『Julieta』(アルモドバル監督でアドリアーナ・ウガルテ主演)、『American Honey』(アンドレア・アーノルド作品でティーン少女が主役)、『Personal Shopper』(アサイアス監督でクリステン・スチュワート主演)、『The Unknown Girl』(ダルデンヌ兄弟監督でアデル・ハネル主演)、『From The Land of the Moon』(ニコール・ガルシア監督でマリオン・コティアール主演)、『Aquarius』(ブラジル映画で中年女性がヒロイン)、『Ma’ Rosa』(フィリピン映画で中年女性がヒロイン)、『The Handmaiden』(パク・チャヌク監督でタブル・ヒロイン)、『The Last Face』(ショーン・ペン監督でシャーリーズ・セロン主演)、『Elle』(上述のイザベル・ユペール主演)、『The Neon Demon』(ニコラス・ウェンディン・レフン監督でエル・ファニング主演)、と実に12本あり、例年の傾向を調べていないので単純に言いきれないですが、これはなかなか多いのではないでしょうか。
・作品賞(1等賞):『The Happiest Day in the Life of Olli Maki』(フィンランド/ジュホ・クオスマネン監督) ・審査員賞(2等賞):『淵に立つ』(日本/深田晃司監督) ・監督賞:マット・ロス監督『Captain Fantastic』(米) ・脚本賞:『The Stopover』(フランス/デルフィーヌ&ミュリエル・クーラン監督) ・特別賞:『レッドタートル ある島の物語』(仏日/ マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督)
「批評家週間」の長編コンペ部門で作品賞を受賞したのが、モロッコの山岳地帯を舞台にした『Mimosas』という作品。僕は未見なので、これから追いかけてみるつもり。2等賞のトルコ映画『Album』を僕は評価しなかったけれど、同僚は気に入っており、結果受賞をしたのでやはり映画の評価は難しい。次点のイスラエル映画『One Week and a Day』は、前半が辛かったものの、後半一気に好転する感動作で、納得。これまた見逃してしまったカンボジア系フランス人のダヴィ・チュウ監督『Diamond Island』も好評で、嬉しい結果でした。