二人の心をつかんだ泰子の魅力
――中也と小林という二人の心をつかんだ泰子ですが、泰子の魅力はどこにあると思いましたか?
木戸:自分自身として考えると難しいんですが、中也としてだと、やっぱり自分の詩を支持してくれたこと、自分の詩が生まれる根源となってくれたというか、エネルギーとなってくれたところかなと思います。それは小林さんに対しても同じかもしれなくて、二人は中也にとって欠かせない存在だったんだろうなと。
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泰子はそもそも隣にいるときだけでなく、小林の元に泰子が行って喪失感に襲われているときも、その存在自体がいろいろな詩を生むための引き出しになってくれた気がします。中也にとっては生きていく上で、詩をつかまえる上で本当に欠かせない存在だったと思います。
岡田:泰子はセンシティブな部分を持っていましたけど、人間としてたぶん目が離せないくらい魅力的ではあったと思います。一緒の空間にいると、どうしたってフォーカスがそちらに合ってしまうというのは、言葉にはできないけどあったんじゃないかなと。
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あと、小林さんは泰子の芸としての才能を認めていることがおそらく前提にあって、さらに中也の才能は誰よりも小林さんが一番理解していたんですよね。その二人の関係を崩すことによって、中也も泰子の才能も、もしかしたらまた違う形で開花するんじゃないかと考えていたのかなと…そう思った瞬間はありました。
――演じられた広瀬さんご自身は、泰子の魅力をどう思っていましたか?
広瀬:魅力なのか、こっちの執着を押しつけているのかは分からないですけど…何かあるんでしょうね。
岡田:言葉にできないよね。
木戸:ね、難しいよね!
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広瀬:うん。ほかにいない、なかなか出会わないタイプというか。その醸し出している何かが色っぽさや危うさに繋がったり、いろいろなものの色が一瞬で変わるような何かを持っていて。自分自身でも、どれも本当だから「こういう人」みたいなものにハマっていない人だなと思いました。そういうエネルギーの醸し出しもあるんだなあと感じましたね。