昨年の映画祭の様子/Photo by John Phillips/Getty Images
8月30日から9月9日まで開催される、第80回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門を含むプログラムが発表された。
ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭と並び世界三大映画祭の1つとして知られるヴェネチア国際映画祭。今年のセレクションは、映画祭会長のロベルト・チクット氏とアーティスティックディレクターのアルベルト・バルベーラ氏によって発表された。バルベーラ氏によると、現在行われているSAG-AFTRAのストライキの影響はかなり控えめとのことだ。
日本からはコンペティション部門において濱口竜介監督の『悪は存在しない』、ノンフィクション部門にて坂本龍一のドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto | Opus』、そしてオリゾンティ部門にて塚本晋也監督の『ほかげ』が名を連ねている。
また、オープニング作品はルカ・グァダニーノ監督の『Challengers』からエドアルド・デ・アンジェリス監督の『Comandante』に差し替えられ、クロージング作品はフアン・アントニオ・バヨナ監督の『Society Of The Snow』に決定した。
コンペティション部門の審査委員長は、すでに発表されている通り、デイミアン・チャゼルが務める。
コンペティション部門
映画祭のメインの部門で、世界初公開となる長編映画の新作の数々が最高賞の金獅子賞など各賞を競う部門。
ヴェネチア国際映画祭と長年親交のあるNetflixからは、マイケル・ファスベンダーが冷酷な暗殺者を演じるデヴィッド・フィンチャー監督の『The Killer』、ブラッドリー・クーパーが監督・主演を務め指揮者のレナード・バーンスタインを描いた『Maestro』、そしてアルフレド・カストロを中心としたキャストで独裁者アウグスト・ピノチェトを吸血鬼として描いたパブロ・ラライン監督の『El Conde』の3作品が選出。
さらに、最高賞の金獅子賞を争うとされる注目作には、ピュリッツァー賞受賞者イザベル・ウィルカーソンの著書「カースト アメリカに渦巻く不満の根源」にインスパイアされたエヴァ・デュヴァーネイ監督の『Origin』、ソフィア・コッポラ監督が手がける伝記映画『Priscilla』、主人公エンツォ・フェラーリ役にアダム・ドライバー、その妻ローラ・フェラーリ役にペネロペ・クルスを迎えたマイケル・マン監督作『Ferrari』が候補に挙がっている。
セネガルのダカールを出発してヨーロッパを目指す2人のアフリカ人青年の旅を描いたマッテオ・ガローネ監督作『Io Capitano』、リリー・ジェームズ、ジョー・キーリーらが出演するサヴェリオ・コスタンツォ監督の『Finally Dawn』、ジョルジョ・ディリッティの第二次世界大戦ドラマ『Lubo』、そして2020年にオリゾンティ部門で入賞したダークコメディ『略奪者たち』に続くピエトロ・カステリットの2作目『Enea』も注目を集めている。
そのほか、リュック・ベッソン監督の『Dogman』やデンマークのニコライ・アーセル監督によるマッツ・ミケルセン主演の時代劇『The Promised Land』、フランドル地方の作家フィエン・トロッシュのドラマ『Holly』も有力とされている。
🎥作品名/監督名一覧
『Comandante』(イタリア)/エドアルド・デ・アンジェリス ★オープニング
『The Promised Land』(デンマーク、ドイツ、スウェーデン)/ニコライ・アーセル
『Dogman』 (フランス)/リュック・ベッソン
『La Bete』(フランス、ドイツ)/ベルトラン・ボネロ
『Hors-Saison』(フランス)/ステファヌ・ブリゼ
『Enea』(イタリア)/ピエトロ・カステリット
『Maestro』(アメリカ)/ブラッドリー・クーパー
『Priscilla』(アメリカ、イタリア)/ソフィア・コッポラ
『Finally Dawn』(イタリア)/サヴェリオ・コスタンツォ
『Lubo』(イタリア、スイス)/ジョルジョ・ディリッティ
『Origin』(アメリカ)/エイヴァ・デュヴァーネイ
『The Killer』(アメリカ)/デヴィッド・フィンチャー
『Memory』(メキシコ、アメリカ)/ミシェル・フランコ
『Io Capitano』(イタリア、ベルギー)/マッテオ・ガローネ
『悪は存在しない』(日本)/濱口 竜介
『The Green Border』(チェコ、ポーランド、ベルギー)/アグニエシュカ・ホランド
『Die Theorie Von Allem』(ドイツ、オーストリア、スイス)/ティム・クルーガー
『哀れなるものたち』(イギリス、アイルランド、アメリカ)/ヨルゴス・ランティモス
『El Conde』(チリ)/パブロ・ラライン
『Ferrari』(アメリカ)/マイケル・マン
『Adagio』(イタリア)/ステファノ・ソッリマ
『Woman Of』(ポーランド、スウェーデン)/マウゴシュカ・シュモフスカ、ミハウ・エングレルト
『Holly』(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、フランス)/フィエン・トロッホ
アウト・オブ・コンペティション部門
過去にヴェネチア映画祭に参加した監督の新作など、注目すべき大作を中心に短編やドキュメンタリーが揃う。
この部門では、ベネディクト・カンバーバッチ、レイフ・ファインズ、デーヴ・パテール、ベン・キングズレーらが出演するウェス・アンダーソン監督『The Wonderful Story of Henry Sugar』や、キーファー・サザーランド主演のウィリアム・フリードキン監督の軍法会議ドラマ『The Caine Mutiny Court Martial』も選ばれている。フリードキン監督は『エクソシスト』の50周年記念リマスター版の上映にも参加予定。
また、フリードキン監督とほぼ同世代で、物議を醸したふたりのベテラン監督の新作が登場。新世紀前夜のリゾート地の高級ホテルを舞台にしたロマン・ポランスキー監督のブラック・コメディ『The Palace』やウディ・アレン監督のロマンティック・スリラー『Coup De Chance』が選出された。映画祭の二監督の作品の上映の決定に対しては反発の声もあがっているようだ。
🎥作品名/監督名一覧
【フィクション】13作品
『Society Of The Snow』(スペイン、ウルグアイ、チリ)/フアン・アントニオ・バヨナ ★クロージング
『Coup De Chance』(フランス、イギリス)/ウディ・アレン
『The Wonderful Story Of Henry Sugar』(アメリカ)/ウェス・アンダーソン
『The Penitent』(イタリア)/ルカ・バルバレスキー
『L’Ordine Del Tempo』(イタリア、ベルギー)/リリアーナ・カヴァーニ
『Vivants』(フランス、ベルギー)/アリックス・デラポルト
『Daaaaaali!』(フランス)/クエンティン・デュピュー
『The Caine Mutiny Court-Martial』(アメリカ)/ウィリアム・フリードキン
『Making Of』(フランス)/セドリック・カーン
『Aggro Dr1ft』 (アメリカ)/ハーモニー・コリン
『Hit Man』(アメリカ)/リチャード・リンクレイター
『The Palace』(イタリア、スイス、ポーランド、フランス)/ロマン・ポランスキー
『Snow Leopard』(中国)/ペマ・ツェテン
【ノンフィクション】6作品
『Amor (It-Lithuania)』/バージニア・エレウテリ・セルピエリ
『Frente A Guernica』 (Versione Integrale) (イタリア)/イェルバント・ジアニキアン、アンジェラ・リッチ・ルッキ
『Hollywoodgate』 (アメリカ)/イブライム・ナシュアト
『Ryuichi Sakamoto | Opus』(日本)/空音央
『Enzo Jannacci Vengo Anch’io』(イタリア)/ジョルジョ・ヴェルデッリ
『Menus Plaisirs – Les Troisgros』(アメリカ)/フレデリック・ワイズマン
【シリーズ】2作品
『D’Argent Et De Sang』/グザヴィエ・ジャノリ、フレデリック・プランション
『I Know Your Soul』/アレン・ドルジェビッチ、ネルミン・ハムザギッチ
スペシャル・スクリーニング
『La Parte Del Leone: Una Storia Della Mostra』/バティスト・エチェガレイ、ジュゼッペ・ブッキ
オリゾンティ部門
世界映画の新しいトレンドに焦点を当てた部門。チュニジアの鬼才モハメド・ベン・アッティア監督の『Behind the Mountains』があり、ブレイク作『Hedi』の主演俳優マジ・マストゥーラと再共演を果たした。塚本晋也監督の『ほかげ』もこの部門に入っている。
🎥作品名/監督名一覧
『A Cielo Abierto』/マリアナ・アリアーガ、サンティアゴ・アリアーガ
『El Paraiso』/エンリコ・マリア・アルターレ
『Behind The Mountains』/モハメド・ベン・アッティア
『The Red Suitcase』/フィデル・デブコタ
『Tatami』/ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミル・エブラヒミ
『Paradise Is Burning』/ミカ・グスタフソン
『The Featherweight』/ロバート・コロドニー
『Invelle』/シモーネ・マッシ
『Hesitation Wound』/セルマン・ナカル
『Heartless』/ナラ・ノルマンド、ティアオ
『Una Sterminata Domenica』/アラン・パローニ
『City Of Wind』/ルカグヴァドゥラム プレヴ・オチル
『Explanation For Everything』/ガーボル・ライス
『Gasoline Rainbow』/ビル・ロス、ターナー・ロス
『En Attendant La Nuit』/セリーヌ・ルゼ
『Housekeeping For Beginners』/ゴラン・ストレフスキ
『ほかげ』/塚本晋也
『Dormitory』/ネヒル・ツナ
オリゾンティ・エクストラ部門
あらゆるジャンルのオフビート作品に特化した、2021年に新設されたばかりの部門。映画祭参加者が主人公となって、作品を審査する。
マイケル・ピットが出演するジャック・ヒューストン監督のボクシングドラマ『Day of the Fight』、オリモ・シュナーベル監督のロマンティックスリラー『Pet Shop Boys』、アイルランドの人里離れた村を舞台にリーアム・ニーソンとケリー・コンドンが共演するロバート・ロレンツ監督のスリラー『In the Land of Saints and Sinners』などが選ばれた。
🎥作品名/監督名一覧
『Phantom Youth』/ルアナ・バイラミ
『Forever-Forever』/アンナ・ブリャチコワ
『The Rescue』/ダニエラ・ゴッジ
『In The Land Of Saints And Sinners』/ロバート・ロレンツ
『Day Of The Fight』/ジャック・ヒューストン
『Felicita』/ミカエラ・ラマッツォッティ
『Pet Shop Boys』/オリモ・シュナーベル
『Stolen』/カラン・テジパル
『L’Homme D’Argile』/アナイス・テレンヌ
※表記は英題優先、一部原題で記載
Sources:ヴェネチア国際映画祭公式サイト、Screen Daily、Variety