「役や作品・監督によって当然、求められるものは違ってきますが、毎回、同じ熱量でぶつかっていく構えでいます。“てにをは”含め、すべて台本通りにやってほしいと、テクニカルなものを求められるときもあるし、台本より心をそのまま表現してほしいと言われるときもある。僕はどれでも完全燃焼ですし、毎回、同じではないから楽しいんです」。
観客と作品を共有することは「奥行きを知れる機会で、僕にとっても喜び」

自身の引き出しをフル活用して、役に捧げる。井浦さんの出演作の多彩さは、フィルモグラフィーを見れば一目瞭然だが、思いの深さこそ胸を打つ。作品公開前の精力的なプロモーション活動はもとより、公開後の活動にも熱心だ。様々な地域への舞台挨拶およびティーチインに出席したり、コロナ禍ではSNSでのライブやオンラインイベントに参加するなど、作品の盛り上げに一役買っている。
例えば、こんなことも。2018年に出演し、好評を博したドラマ「アンナチュラル」で演じた法医解剖医・中堂系になりきった、9月10日のツイートも話題を呼び、ファンを喜ばせた。そんな小粋な演出も、井浦さんならではの計らい。本人は「時間があるときにやってるだけなんですけどね(笑)」と照れ笑いだったが、プロモーション活動への信念は強固だ。
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「本来、映画やドラマは観てもらうだけで完結しますけど、味わい方や楽しみ方って、いろいろな形があると思っているんです。参加した作品については、役の大小問わず、あまり厚かましくならなければ、とことん関わらせていただきたいんです。演じるだけでなく、観客の方たちに伝えていく作業も、俳優の仕事のひとつだと僕は思っているので。観る環境をさらに楽しめたり、喜んでいただけるのであれば、別に、それは労力でもないですし」。
作品公開後も行うプロモーション活動は、「作品への感謝の表し方」という表現をする一方で、「自分自身が知りえなかった奥行きを知れる機会であり、一体感を共有できることは、僕にとっても喜びなんです」と、井浦さんは目を細めた。