「嘘や虚構が本当になる」初の河瀬組/理想的な撮影現場を体験して
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井浦さんの最新出演作『朝が来る』は、『殯の森』や『あん』などで知られる河瀬直美監督が脚本・撮影を務めた。「特別養子縁組」という制度のもと、実の子を持てなかった夫婦と、実の子を育てることができなかった14歳の少女、それぞれの視点で命と家族を描き出している。井浦さんの役どころは、一度は子どもを持つことを諦めた栗原清和。清和は特別養子縁組制度を知り、妻の佐都子(永作博美)と、男の子を迎え入れることを決意する。
「作品に入る前、監督からは“あれをやっといて”“これを知っといて”と指示がきましたし、実際、永作さんとふたりで特別養子縁組のご夫婦に面会させていただいて、お話も伺いました。朝斗(息子)役のオーディションには、僕らも参加して3人でセッションをしたり。映画作りというものに、河瀬監督が巻き込んでくれたんです。役を積んでいくという“役積み”をしてから初日を迎えるのは、本当にありがたいことでした」。
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撮影はすべて順撮り。シーン1から始まり、「嘘のない」状態で挑んでいった。
「この映画を観ていると、誰かの生活をちょっとのぞき見しているかのような生々しさを感じるんです。河瀬組の撮影現場では、演じる俳優たちに嘘がなくなってしまう。嘘が、虚構が、本当になるんです。それがちゃんと画に映っているんだなと、完成したものを観て思いました。僕にとっては一番理想で、目指している映画の作り方なんですね。きっと、どの監督もスタッフさんたちも、できるならばそうしたいと思っているでしょう。そのことをやってのける、本当にたくましい監督だなと思いました」。
贅沢な、理想的な現場に身を置いて、全力を注ぎ込んだ撮影期間。初の河瀬組でのオールアップは、抜け殻のようになったのかと問うと、「うーん…」と思案した後、「言葉では言い表せないんですけど、」と切り出した。井浦さんの作品愛がこだまする。
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「撮影は生命そのものを作品にぶつけていくから、本当に魂をすり減らすので、すごくきついんです。なので“早く終わって楽になりたい”気持ちもどこかにはありながら、真逆で“終わりたくない”気持ちも、もっと大きくありました。こんな純粋な現場にずーっといられたら、なんて幸せなんだろうと思いながらも、早くうちに帰って自分の家族と過ごしたい気持ちもありましたし(苦笑)、様々でした。…打ち上げのときが一番きつかったかな。“ここにいると本当に終わっちゃうんだ”と思って、ひとりで外に出て呆然としていたり。いろいろな感情がありました」。