本作は『ヘレディタリー/継承』で全世界に衝撃を与えたアリ・アスター監督最新作。家族を不慮の事故で亡くしたダニー(フローレンス・ピュー)が、大学で民俗学を研究する恋人や友人たちと共に訪れたスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”で経験する狂気に満ちた出来事を描く。
日本公開前にも関わらず、すでに複数回観賞した人もいるというほど、ファンで埋め尽くされた会場にアスター監督は登場すると「僕は日本映画によってインスピレーションを与えられて、人生を変えてもらいました。今回初来日になりますが、そんな日本の皆さまに、作品を携えてやってこれたことが光栄です」と挨拶。
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まずは司会者から衝撃的なエンディングについて「いつから結末を決めていたのか」と聞かれたアスター監督は「エンディングは最初から頭にありました」と語ると「脚本はエンディングのアイデアに向かって書きました。この映画はお別れや失恋の映画という位置づけなのですが、最後どうやったらカタルシスが得られるかを考えました。しかし少し時間がたつと、ドロドロが渦巻いて『本当にこれでいいのか』という気持ちになるように作りました」と説明する。
さらに前作『ヘレディタリー/継承』同様、本作でも印象的な音楽が使われていることについて問われたアスター監督は「映画作りのなかで一番好きなのがサウンドデザインなんです」と語ると「作品に没入し、主人公のダニに感情移入してほしいと思うとき、重要になってくるのが音楽なんです」と持論を展開。さらにアスター監督にとってジョナサン・グレイザー監督の『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』や、スタンリー・キューブリック監督やジャック・タチ監督の作品が音楽的に傑出していると述べていた。
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その後も、劇中に印象的に登場する絵や、色彩、ジャンルについてやハッピーエンドの解釈などディープなトークが展開。ロビン・ハーディ監督の名作映画『ウィッカーマン』との差別化について問われると「『ウィッカーマン』はとても有名な作品で僕も観ていました。でもこの作品を執筆しているときはオーバーラップするのが心配だったので、見ないようにしていたんです」とアスター監督は語る。それでも「異文化、異教徒の人々がやってきて、犠牲になるという部分では比較されやすい。でも本作の主人公ダニの存在が決定的に『ウィッカーマン』とは違うところです」と主張していた。
『ミッドサマー』は2月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。