目の前にいる彼は、透き通った瞳を持つ朗らかな人。『永遠の門 ゴッホの見た未来』のジュリアン・シュナーベル監督が、フィンセント・ファン・ゴッホの純粋な魂を彼に託そうとしたのも頷ける。
画家でもある監督から1対1でのレッスン
とは言え、あまりにも有名な画家ゴッホは謎めいた人物でもあり、彼に関する逸話それぞれに諸説がある。そんな人物を演じるうえで大切にしたものは何か。
「やはり、彼と絵画の関係性だね。人生の中心に、なぜ絵画があったのか。ゴッホは自分こそが絵画であると捉え、絵を描く行為に共感しきっていた。絵を描いている瞬間の彼は幸せで、完全だったんだ。気持ちが乱れたときは、自然の中で絵を描いた。様々な不安を抱えてはいたけれど、そうすることで解き放たれていたんだ」。
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「演じる以上、僕自身もそうなる必要があった」と述懐。
「役に取り組むプロセスは作品によって異なる。けれど、共通点もあるんだ。それは、行動しなくてはならないということ。インスピレーションは待っていても来ない。役の原動力が何かを考え、見つけ出そうとしなければ、何も得られないだろうね」とも語る彼にとって、ゴッホになるための「行動」は、シュナーベル監督の絵画レッスンだったという。画家でもある監督から、1対1でのレッスンを受けた。
「最も重要な時間だった。それにより、物の見方が変わったんだ。すると、いままでは気づかなかったことに気づけるし、書簡などでゴッホが遺した言葉の意味が見えてきたりもする。滑稽な言い方をするなら、僕の一部がゴッホになることで、彼との対話を始められたんだ。そうなれば、あとは自分の中の彼が前に出るよう、残りの僕が背中を押せばいい。もちろん、衣装やセットなど、周りの助けも必要だ。『君こそがフィンセントだ!』というおだてもね(笑)。自分自身を置き、役になる。それこそが、僕には美しい瞬間なんだ」。
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