全く異なるアプローチで“新たなジョーカー”が誕生
――アメコミ界きってのヴィランであるジョーカー誕生秘話をオリジナルストーリーで描いた本作。先日発表された第76回ヴェネチア国際映画祭で、最高賞にあたる金獅子賞に輝いた瞬間、あなた自身はどのように感じたのでしょうか?
ただただ、僕の期待や想像を超えた出来事だったね。トッド(・フィリップス監督)とはいつも「自分のキャリアを終わらせるような映画は作りたくない」ってジョークで言っているんだけど(笑)、正直『ジョーカー』がこういう形で熱狂的に受け取られるとは思いもしなかった。映画にとってはいいことだけど…、何て言えばいいんだろう? もう「驚きと興奮」という言葉に尽きるね。

――ジョーカー役のオファーを受けた際は、どのように思いましたか? 即決だったのか、それとも迷いがありましたか?
どんなオファーも簡単には引き受けられないが、今回ばかりは、ジョーカーを演じきれる自信がなかったから、大いに迷った。それくらい『ジョーカー』は大きな挑戦なんだ。演じるうえで、映画が示すメッセージ、そして自分自身を深く掘り下げる必要があったし、きっと観客にとってもチャレンジングなものになると思った。新しい何かとの出会い…と言えば、大げさに聞こえるけど、目の前に知らない世界が広がるのは、俳優冥利に尽きるね。映画を見る魅力もそこにあると思うから。そう考えれば、ジョーカーほど最高なキャラクターはいないよ。

――ジョーカーは過去に何度も映像化されたキャラクターですよね。
ジョーカーといえば、子どもの頃に見た『バットマン』(1989年製作)のジャック・ニコルソンがとても印象に残っているし、『ダークナイト』のヒース・レジャーがすばらしかったのは、言うまでもない。助演だから、決して出演シーンが多いわけじゃないのにね。どちらのジョーカーも、一瞬にして見る者を恐怖させ、同時に魅了したんだ。
――そのうえで、改めてジョーカーを演じるあなたが、意識したことは何ですか?
だからこそ、僕らはまったく異なるアプローチで、いま一度ジョーカーを掘り下げる必要があったし、それは大きな利点だった。映画そのものを理解することに役立ったからね。アイデアはたくさん持ち寄ったが、「このやり方がジョーカーにはぴったり」というわかりやすい道筋は見えなかった。だから、何かに影響を受けた…というのは、答えるのが難しいな。あっ、そうだ! 実は撮影中、ふと「あっ、いまの自分はフランクン・フルターに影響されているな」って思う瞬間があったんだ。そう、『ロッキー・ホラー・ショー』に登場する奇妙な城主のフルター博士さ。子どもの頃から大好きで、いつか演じたいと思っていたほどだから、不思議な感覚に襲われたよ。