「俳優」としての夢の一つが叶った作品
この作品に対しての第一印象を聞くと、「脚本家・荒井晴彦の作品に出ることが、この仕事を始めてからの一つの夢だった」と開口一番に答えてくれた柄本佑。小規模なミニシアター作品からメジャー作品までありとあらゆるジャンルの作品、媒体(映画やドラマ、舞台など)で「俳優」として活躍する彼の夢の一つを叶えた映画が『火口のふたり』だ。

「最初に荒井さんからこの脚本をいただいて読んだとき、非常にソリッドで良い作品、そして単純に面白いと思いました。この作品じゃなかったとしても、たぶん、二つ返事で『やります』って言っていたと思うんですよね。だって荒井作品だから。初号が終わって荒井晴彦監督作品っていう座組の中に自分の名前が入っているっていうことがまず嬉しかった。やっぱり欲が出て、また呼んでくれないかなと思ってます(笑)」

『火口のふたり』は秋田県を舞台に、かつて東京で恋人同士として暮らしていた賢治(柄本さん)と直子(瀧内公美)が、直子の結婚を機に再び出会い、衝動の赴くままに過ごす5日間と、その驚きの終わりを描く。賢治という男は一言で言ってしまえばダメ男だ。
「この賢治って、あまりにも自分のことを大事にせず、鬱病になったり治ったり、ふらふらしているから女房に逃げられて子どもも連れて行かれちゃって。いい年なのにフリーターで、暇さえあれば釣りなんかして、とにかく生活に覇気がない男」。
「そんな男が衝撃の事実を知るんですが、それまでさんざん自分を傷つけてきたから、こんな状況になったなら、せめて最後だけでは“身体の言い分”に正直にいてやろうとする。そう思える賢治って、実は優しい男なんじゃないかなって思ったし、最後の最後に、そういう行動ができる賢治が面白いなと思ったんです」

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