日本でも大ヒット! 『ボヘミアン・ラプソディ』
まずは、世界中で大ヒット御礼中の『ボヘミアン・ラプソディ』。伝説的ロックバンドの「クイーン」のボーカリストで、45歳のときにエイズでこの世を去ったフレディ・マーキュリーの激しくも切ない半生を描いたロック・エピック。
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アカデミー賞が興行収入に比例した結果であればオスカー像の行方を占うのは簡単だが、受賞への道のりには様々な障害物が横たわっているのがアカデミー賞レースだ。現在この人気作品は監督ブライアン・シンガーのセクハラ疑惑のせいで、監督の愚行とは全く無関係な映画自体が不公平な色眼鏡で見られている。スキャンダルに敏感なアカデミー賞なだけに、本作の作品賞は危ぶまれている。
実話を基にした社会派の2作品
役作りが話題に『バイス』
クリスチャン・ベイルがチェイニー副大統領になりきった政治ドラマ『バイス』は、ゴールデングローブ賞をはじめ、軒並み主要カテゴリーでの映画賞を受賞し話題となっている。アカデミーが好きな文芸大作といったジャンルではないものの、出演者それぞれの演技は素晴らしく、作品賞も含めて何部門で受賞するか、授賞式当日の行方が楽しみ。

冗談のような実話『ブラック・クランズマン』
スパイク・リー監督作品『ブラック・クランズマン』は70年代始め、実際に行われた冗談のようなおとり捜査が舞台となる。米国で黒人人権問題が頂点に達していたころ、黒人の刑事が白人至上主義団体KKKの実態を探るためのおとり捜査を提案する。周囲の反対を押し切って、白人になりすましてKKKの責任者に電話をかけて入団を取り付けたかと思うと、現場潜入は相棒の白人刑事にまかせるという大胆すぎる潜入操作を開始する、というお話。

映画の舞台から現在まで50年近くの時が経っているにもかかわらず、いまだに社会の根底にくすぶる人種差別問題は70年代以来あまり変わっていないことが見て取れる。もし本作が作品賞を受賞したら大変なニュースになるだろう。
人気俳優×世界的歌姫で話題沸騰『アリー/ スター誕生』
人気アクターのブラッドリー・クーパーが主演・監督でミュージック界の女王レディー・ガガが往年のクラシック映画リメイクに挑戦するということで公開前からかなりの話題をさらっていた『アリー/ スター誕生』。
ブラッドリー演ずるロックスターのジャクソンが、ツアー途中に立ち寄ったバーで出会ったガガ演じるウエイトレスのアリー。その美貌のみならず類まれな彼女の歌唱力に惚れ込み、恋に落ちるとともに彼女を育成することになるが、2人の幸せは束の間。アリーがスターダムを駆け上っていくのに反比例するかのようにアルコールに溺れ自己破壊の道を辿るジャクソン。

2人の行く手には悲しい結末が待っているわけだが、この悲恋の物語はこれまでにも2回映画化されている名作。巷ではガガとブラッドリーの歌曲賞受賞はほぼ確実とうわさされているが、リメイク作品である映画自体の作品賞受賞は果たしていかに?
女の闘いを滑稽に描く『女王陛下のお気に入り』
『女王陛下のお気に入り』の舞台となるのは1708年英国。アン女王の統治下にあったイギリスはフランスとの戦争に明け暮れていたが、宮廷はといえば女王の幼なじみから側近に成り上がったサラが政治を牛耳っていた。病気がちで世嗣ぎもいない女王は、政治にほとんど興味を失い、ゲームと贅沢に明け暮れていた。
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そんなある日、サラの従姉妹アビゲールが職を求めて訪ねてくる。ギャンブル中毒の父親のせいで貧乏の奈落に貶められていたアビゲールは、従姉妹のサラを差し置いてでも自分の地位奪回のチャンスを狙っていた。自分の地位に驕り高ぶっていたサラは、一瞬の隙を突かれてアビゲールに女王の寵愛を奪われる。醜い女の争いの行方には何があるのか?
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ドロドロとした女のバトルを滑稽に描いて注目を集めているが、主演アン女王を演じたオリヴィア・コールマンの怪演は特筆に値するものの、本作を作品として『ROMA/ローマ』や『グリーンブック』と比べた場合、特にノリに乗っている『ROMA/ローマ』を尻目にオスカー像を得られるかどうかが見ものだ。
大本命はこの3作品!
アメコミ映画初の快挙なるか『ブラックパンサー』
そして、最終オスカー争いはこの3作品に焦点が集まると見ている。紹介するまでもない『ブラックパンサー』は、マーベルのスーパーヒーローもの。とはいえ、その中に現代の排他的な政治の様相や人種差別などをさりげなく盛り込んだストーリーはほかのアクションヒーローものとは一線を隔ている。
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過去には大人気の『スターウォーズ』や『ET』ですら作品賞を取れずアクションやSFに冷たいと言われ続けているアカデミーだ。もしも『ブラックパンサー』が作品賞を受賞したら、やっとアカデミーにも新時代が訪れたと言える大ニュースとなる。
笑いと感動のロード・ムービー『グリーンブック』
『グリーンブック』は、去年のアカデミー助演男優賞受賞者マハーシャラ・アリとヴィゴ・モーテンセン共演の人間ドラマ。昔あった『ドライビング・ミス・デイジー』のドライバーを白人にしてミス・デイジーを黒人ミュージシャンにした感じといえば見ていない方にも分かりやすいだろうか。

筆者の周囲でこの映画を見て気に入らなかったという人は1人もいないことから考えて、これがアカデミーの投票にも当てはまればこの作品がオスカーを手にする事態も十分ありえる。
各地の映画賞を席巻『ROMA/ローマ』
だが今年いちばんの強豪は『ROMA/ローマ』だ。とにかく「旬」という言葉がピッタリの映画だ。トランプ政権になってから、不法入国・滞在などの問題から不当な扱いを受けているメキシコ。その国出身の監督アルフォンソ・キュアロンが自分の生い立ちをもとに、メイドの視点から描いたポエムのような映画で、主人公にはメキシコ原住民の新人女優を起用して白黒で撮影敢行という、アカデミー賞受賞のために作られたような“芸術”映画である。
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現在の風向きから言うと『ROMA/ローマ』が作品賞を受賞する公算が高い様相だが、本作は外国語映画賞候補にもなっていることから、作品賞でも受賞したら前代未聞の大ニュースになる。
今年も最後まで目が離せないアカデミー賞となりそうだ。(text:Akemi K. Tosto)