フランスでは数々の映画祭で様々な賞を獲得し、最も権威ある映画賞・セザール賞にもノミネートを果たした本作。自身の居場所/アイデンティティを探してパリを彷徨うポーラの姿、そして彼女が下す決断に観客の心は揺さぶられ、一種の開放感と希望を感じるはずだ。
都会で生きる女性は思わず共感!?
フランス映画に見る人生の“居場所探し”
主人公のポーラは31歳。タイトルは『若い女』だが31歳は決して若くない。でもオバサンでもない。なぜこのタイトルなのか? 誰もが疑問に思うだろう。そして徐々にその意味を理解していく。
“若い女”に込められているのは、ポーラというキャラクターが自由奔放であるという意味での若さ、大人気ないという意味での若さ、31歳をスタート地点にそこから成長していくという意味での若さ、見た目や記号としての若さではない。
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そんな彼女が成長するきっかけとなるのは、10年間付き合っていた写真家の恋人に別れを告げられたことだ。冒頭、ドアに頭をガンガンぶつけて血を流す、何とも強烈な姿が映し出される。とても感情的な女性だ。住む場所も仕事もお金もなくて、どう見たってどん底、絶望的。普通なら耐えられない状況であるのに、ポーラはどこか彷徨うことを楽しんでいるようにも見える。それが彼女の魅力で、愛おしく感じる。応援したくなってしまうのだ。逞しいとも思う。
ポーラは生きるためにベビーシッターと下着売り場で仕事をはじめ、徐々に人生を取り戻していく。ものすごく簡単に言ってしまえば、10年という長さの恋愛と決別して一歩踏み出す物語。彼の写真のなかで生きていた女性が写真の中から外へ飛び出し、解放されていく物語でもあるのではないか。
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劇中、ポーラの「私よ、私なの」というセリフがある。平気で嘘をつくし見栄っ張りな性格ゆえ、表向きは嘘を回避するためのセリフだが、その裏には、私が私自身を認めることで誰でもない私の人生を歩き出す、という意志を感じる。私は私──現代を生きる女性全員がポーラから勇気をもらうだろう。
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カンヌ国際映画祭カメラドールの快挙!
注目の若手女性監督が描く見たことのないパリ
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それはパリの描き方にも言える。パリを舞台にした映画というと、観光名所や風光明媚な街並、お洒落なカフェが登場してもいいものだが、この映画にはそれもない。恋人の家から追い出されたポーラが転々とするのは、寂れた安ホテル、荒れかけた墓地、冷たい雰囲気の地下鉄、住み込み先の屋根裏…ポーラの目を通して映し出されるのは、あまり見たことのないパリの姿だ。
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病院で額の傷の治療をしてもらいながら「彼がすべてだったから、何もなくなった」と涙を流す彼女に、担当医が「今は一人だとしても、若くて自由な身だし…」となぐさめると「自由が何よ、ムカつく。自由なんてバカどもにくれてやる!」と癇癪を起こす。別のシーンでは、黒人警備員に「パリが嫌い?」と聞かれると「パリが人間を嫌いなのよ」と答える。ファッションの街でも恋人たちの街でもない、ポーラが不平不満を言いながらも愛する街として描かれるパリはとても新鮮だ。
ちなみに、パリのモンパルナス周辺は監督が初めてパリへ来たときに住んだ場所。そんなレオノール・セライユ監督の想い出の街を舞台にしたこの映画は、カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)に輝いた。
「“何度でも立ち上がれる”と思えた」「勇気をもらえた」…ポーラが見せてくれる希望
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■「すごく共感できる映画でした。パリの今の事情もすごく反映していてよかったと思いました。」(30代)
■「強くてかっこいい。女性の魅力がよく表現できていたところも映画として素晴らしかった。」(年齢無回答)
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■「人間として青いという意味の「若い」、31才でもまだ生き方を変えられるという意味の「若い」と、いろいろな意味の「若い」があるのだと思いました」(20代)
■「恋愛で傷ついて前に進むという映画はよくあるけど、ここまで主人公が感情をむき出しにしている映画は初めてかも。10年という時間、それを様々なことで乗り越えて新しく人生に向かう姿に、"私たちはまだまだ何でも出来る""何度でも立ち上がれる"と思うことが出来た」(20代)
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そして、主人公であるポーラに対しての印象が、映画の冒頭とラストで変わったか? という質問に対し、「変わった」と答えた人は全体の約7割! 彼女の成長を見届けることができて、救われた気持ちになったという意見も多くみられた。
■「たぶん何年も恋人という世界しか知らなかったポーラがパリとか人を知って成長した感じはありました。すごく最後が美しかったです。顔も美しかった。」(30代)
■「冒頭では情けなくて何も持っていない女性でしたが、奇抜なアイデアと行動力で次第に前向きになり、精神的にも強くなった女性に変身し、同世代の私は勇気をもらいました!!」(30代)
感情のままに、孤独な街を彷徨うポーラの姿に、知らず知らずのうちに私達は魅了されていく。
〈提供:サンリス〉