23日夜(現地時間)、第68日カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の授賞式が行われ、『岸辺の旅』の黒沢清監督が監督賞を受賞した。19本の候補作の中でも、フランスの新聞「ル・モンド」をはじめ、現地で高い評価を受けていた『岸辺の旅』が、見事、監督賞に輝いた。授賞式に登壇した黒沢清監督は、「本当に驚いています。ささやかな、地味な作品から一つの輝きを審査員の皆さんは発見してくださった。そういうことが起こるのがカンヌなんだと思います」と感激の面持ちで語った。黒沢清監督は7年前に、『トウキョウ・ソナタ』で同部門の審査員賞を受賞しており、2つ目の栄冠となった。受賞後の会見では、「7年前は妻が病気で1日で帰ってしまったため、授賞式に参加できず、全然受賞した実感がありませんでした。今回は妻も一緒に来られて嬉しいです」と照れながら語った。『岸辺の旅』は、3年前に死んだはずの夫と彼を待ち続けていた妻が、最後の旅をするというストーリーで夫婦を深津絵里、浅野忠信が演じている。黒沢監督は「深津さん、浅野さんに最大の感謝を捧げたいです」と語った。今年の「ある視点」部門の審査委員長は女優イザベラ・ロッセリーニ。今年のカンヌのアイコンであるイングリッド・バーグマンの娘であるロッセリーニから受賞後、「私は母が死んでからも、ずっとすぐそばにいるような気がしていた。それは私だけが特殊なのかと思っていたけれど、あなたの映画を観て、同じような人がいるのだと思った」と声をかけられ、感激したという。