久々の更新となりました。グザヴィエ・ドランの『Mommy/マミー』をご紹介します。あと最近面白かったのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督の遊び心満載な『インヒアレント・ヴァイス』、各所で絶賛されている『セッション』、ホーキング博士とその妻ジェーンの入り組んだ愛の形『博士と彼女のセオリー』など。『Mommy/マミー』音楽と映像の親和性が素晴らしい。グザヴィエ・ドランの感性とテクニックは物語とリンクする。息子が胸いっぱいに希望を抱く瞬間。ワンダーウォールが鳴り響き、1:1の狭苦しい画角が拡がり始める。スクリーンサイズを変化させることもドランには演出の一部で登場人物の感情の大きなうねりを的確に表現する。そして終盤、母親の息子への想いが溢れ出るとき、もう一度画面は拡大する。ここが1番好きな場面。「ほんのひとときでもいい。人間は未来を想像できる。」母と息子、隣人のカイラ。この3人の関係性もよかった。きれいごとでは済まされない、人間と人間のつながり。人と人はすべてを分かりあえないもの、たとえ親子や家族であっても。ただ、人間は孤独を感じる。さみしさには耐えられない。自分のことを愛してくれる人、理解してくれる人が、ほんの少しでもいてくれれば、人は救われる。ずっと母親目線で観ていたが、ある瞬間、息子の気持ちに自分の感情が重なり泣いた。「ママを愛してる。ただ一緒にいたいだけなんだ。」残酷と希望が交じり合う結末も好み。正方形の映像がずっと頭にこびり付く。