6月、7月公開のイチオシですが、邦画は先日ご紹介した『サッドティー』。そして洋画は今回ご紹介する『her/世界でひとつの彼女』です。すでに観た方も多いと思いますので少しネタバレありなレビューです、未見の方はご覧になった後にぜひ。『her/世界でひとつの彼女』(少しネタバレあり)愛おしいと感じる心。触れたい、交わりたいと感じる身体。この両方を完璧に満たせる恋愛なんて奇跡のようなものだ。そもそも僕は、人と人は分かりあえないものだと思っている。人間関係に対してネガティブな自分には沁みる映画だった。生身の人間は面倒で、居心地の良い人工知能(AI)に恋をする主人公セオドアにリアリティを感じた。ただ、人間同士はすべてを理解し合うことがベストな関係とも言い切れないだろう。恋人や夫婦でも、お互いに分からない部分や気に食わない部分はもちろんあって、それらを含めて受け入れ合うことが人間らしい愛なんだと思う。とうわけで、“AIに恋をする”というテーマは大好物で、ホアキン・フェニックスの演技&衣装、スカヨハのハスキーボイス、ありそうな近未来を伝える美術のおかげで映画の世界にどっぷり浸かったのですが、終盤の展開にだけ少し冷めてしまった。セオドアは本当に人間のようなパソコンのOSであるサマンサに恋をしたのだから、最後まで人間らしい理由で、この“リアル”な恋愛の行く末を描いてほしかった。サマンサのコンピューター的な進歩ではなく、人間的な感情の変化もしくは感情の進歩によって、セオドアとの関係が変わっていくとか。もし仮に「よくわからないけど気持ちが冷めた 」と、いかにも人間らしい説明のつかない心情をサマンサから告げられたら、もうどうしようもないかなと。「結局、生身の人間が1番だよね」という映画のメッセージが、なんか普通というか、そりゃそうだよねと。もちろん、この温かくロマンチックなラストが広く支持されている理由だとも思いますが。ヒトとの恋愛が上手くいかない彼は、AI(人工知能)にもフラれてしまう。なぜならこのAIは誰よりも人間らしく、魅力的な女性なのだから…。こんなふうに、AIとの恋に焦点がしぼられ、シビアな現実を突きつけられて映画が終わっていたら、個人的にはさらに好み。誰もこんな展開求めていないだろうけどw