松田るか、堀内敬子、浅野忠信らの共演で贈る映画『かなさんどー』で、メガホンをとった「ガレッジセール」“ゴリ”こと照屋年之監督の本作の発想の源や脚本開発の苦悩などが明らかに。また、新たなシーンが追加されたスペシャル予告も解禁となった。
2006年に短編映画『刑事ボギー』で映画監督デビューを果たし、同作でショートショートフィルムフェスティバル〈話題賞〉を受賞した照屋監督。
2019年に、沖縄の離島・粟国島に残る風習「洗骨」をテーマに、家族の絆や祖先とのつながりをユーモアを交えて描く長編作品『洗骨』を手掛け、照屋監督ならではのアプローチが口コミで話題を呼び、全国128館での上映、沖縄県内だけで6万5千名超を動員する大ヒットを記録した。
■短編映画『演じる女』から長編映画『かなさんどー』へ
自身の体験からの発想
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本作『かなさんどー』は、2021年の短編映画『演じる女』の前身となっており、アイディアの基礎となる過去作をさらにブラッシュアップさせた“愛の物語”は、死に向かう肉親を見つめる愛おしくも切ない物語として昇華した。
『演じる女』は、認知症をわずらう父が自分の娘に妻の面影を重ね、娘を妻だと思って見つめる父親を最大限に優しく看取ってあげるという物語。
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発想の源について、照屋監督は「ある時期、どの家族でも子どもが母親に似てきたり、父親とそっくりなんてことはよくありますよね。さらに妻に先立たれた男というのは、大抵気持ちが弱くなるもの。心身共に弱くなってしまった男が、時に娘に自分の妻の面影を見ることもあるかもしれない」と持論を明かす。
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「僕自身も、母親が亡くなって父親が残された時、明らかに父親が弱くなりました。散歩をしながら急に『そういえば母さん、どこにいるんだ?』と言い出して、『いやいやおとう、おかあ2年前に亡くなったでしょって』、『あーそう、お母さん亡くなったか‥』と。日常の中のそうした体験が無意識に心に残っているからこそ、この物語が生まれたのかもしれません」と自身の体験を踏まえて脚本を手掛け、今作『かなさんどー』では、より深い人間模様や人々の葛藤を織り交ぜた内容となった。
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■脚本の苦悩「創作の闘いは自分ひとり」
脚本作りで苦心したところについて照屋監督は、「基本的に脚本作りはものすごく苦しく、正直逃げ出したくなる作業です。作業を途中で止めるのが一番良くないので、まずは無理やりにでも最後まで書いて結論づかせます。そしてもう一度冒頭に戻って読み返し、何度も書き直していくんです」という。
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「徐々にストーリーが美しくなるように形作っていくと、2周目から少しずつ心が揺さぶられるようなシーンが見えてきたりします。それらをさらに輝かせるために、かつ他の様々なシーンも磨いていくと、少しずつ手応えを感じながら大きく美しい作品に向かっていくような感触が得られてくる。しかし、その創作の闘いは自分ひとりなので、ノイローゼ気味にもなります。現場だったらスタッフもいて辛いことも踏ん張れたりしますが、脚本だけは孤独すぎて…」と自身1人での苦悩に闘いながら本作の脚本を書き上げたと明かす。
そんな苦しい中にあっても、「逃げてはいけないと言い聞かせて自分を鼓舞し、書き続けていくと活字の中の人々の言葉に赤い血が流れだし、それぞれのキャラクターが際立ってくるとやがてゾーンに入ります」と照屋監督は続ける。
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「脚本の中の人間同士が勝手に語り合うような感覚でしょうか。そこからはもう楽しくて、ニヤニヤしながら脚本を書くんです。ただ言葉選びというのは、本当に難しい。例えば『愛してる』をいかに『愛してる』ではない言葉で伝えるのかがセンス。カッコつけすぎると現実味がないですし、そのせめぎ合いをリアリティを以て深く考える作業は非常に悩ましいです」と語り、沖縄では初日からの3日間で、前作を超える大ヒットスタートを切った本作の根幹が完成した。
■新たな映像が追加されたスペシャル予告も解禁!
新たに青のワンピース姿の美花(松田)や海岸のビーチでの姿などが追加され、これまでとは打って変わり、後半では明るい美花の様子が映し出される。
「お父さんの前では綺麗にいたいさ」と語る町子(堀内)をずっと惨めな女だと思っていた美花が知った本当の両親の姿とは…。
そして最後には、伊江島の名産品ケックンチップスと又吉かまぼこも登場している。
『かなさんどー』は沖縄先行公開中、2月21日(金)より全国にて公開。