獄中結婚をモチーフに、元ヤンキーの児童相談員と死刑囚との運命的な出会いを描いた人気漫画を原作に、堤幸彦監督が映像化した同名映画『夏目アラタの結婚』。人生の中のミステリーとサスペンス、人間のグロテスクな一面とそこから垣間見える感情の煌めき、人が人と繋がることの尊さを描いた異色のボーイ・ミーツ・ガール物語だ。
本作で黒島結菜は最後まで本性が見定められない不気味な死刑囚・品川ピエロこと品川真珠を熱演。可憐さやはつらつとした表情が印象的な役を多く演じてきた彼女が、共演の柳楽優弥を相手に、予想をはるかに上回る怪演で新境地を切り開き、またひとつ代表作を手にしている。
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難役は現場を信頼してのチャレンジ
――原作のエッセンスが凝縮された見事な映像化作品でした。そもそも、俳優として本作に出演したい、品川真珠を演じてみたいと思った理由はどこにあったのでしょうか。
原作を読んだときに、これは難しい役だなと実は迷ったんです。でも主演が柳楽さんで、監督が堤さんだったこともあって出演を決めました。堤監督とはもう何度もご一緒していますし、柳楽さんとは八年ぶりの共演で、是非もう一度一緒にお仕事してみたいとずっと思っていました。お二人がいてくださるなら、難しい役だけれども現場を信頼してチャレンジしてみようという気持ちでお受けしました。
――この難しい役にチャレンジするにあたり、どのようにアプローチしたのでしょう。
原作を読んでいても、脚本を読んでいても、本性が全く見えない、何を考えているか全く分からないキャラクターだったので、彼女を理解するのがとても難しかったですね。ただ、監督が、目線はここ、顎を引いて、手はここで、このセリフの時に寄って行ってとか、かなり細かく動きの演出をつけてくださったので、動きがあることで真珠の考えていること、気持ちの流れがすごく分かりやすくなった気がします。
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そうやって撮影しながら、少しずつ積み上げていきました。彼女の言い分に対して共感まではできなくても、ちょっと分かるなという気持ちも生まれて。すべては純粋さから来ていたのかなと思います。だから、彼女の言動のすべてを悪だと言うことはできないと感じるように。本当に素直に人と向き合っていた結果の言動かもしれない、そんなふうには思うから。だから、ただの邪悪な殺人犯という印象は最初から持たなかったですね。
――捉えどころのなかった真珠という人物像を、原作や脚本を読み進め、彼女の言動をなぞっていくことで、彼女のピュアな部分を強く感じ取るようになっていったんですね。
だから、最初の方でアラタを翻弄するシーンが結構あるんですが、そこに気持ちを持って行くほうが難しかったです。とにかく全編通してお芝居している時は必死で、撮影後は毎日ヘロヘロ。どっと疲れていたんですけど、全部終わって思い返すとすごく楽しかったです。