ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースと役所広司がタッグを組み、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた長編映画『PERFECT DAYS』(原題/日本公開未定)が、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品。レッドカーペットや公式上映に監督やキャスト陣が登場した。
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数々の傑作を世に送り出し続けたヴィム・ヴェンダースが、日本の公共トイレのなかに「small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)」を見出し、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡いだ本作。
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第76回カンヌ国際映画祭、開催10日目となる5月25日、晴れやかな日差しに迎えられ、15時半頃、『PERFECT DAYS』のコンペティション上映を直後に控えたヴィム・ヴェンダース監督、主演の役所広司、中野有紗、アオイヤマダ、田中泯がレッドカーペットに登場した。大きな声援を受け、ゆっくりとレッドカーペットを進むと、劇中で使用されている楽曲Lou Reedの「Perfect Day」がかかり、監督が思わず踊りだす場面も。
レッドカーペットの前に実施された取材では、「編集ではみんなの顔を見ていたけど、カンヌで実際に会うことができてとても嬉しい」と顔をほころばせていた監督。
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役所さんについて聞かれると「彼の作品は、かなりの数を見た」という。「警官としても侍としても素晴らしい、なんという役者なんだと思っていた。役所さんと仕事するのは夢のようでした」と役所さんへの思いを明かす。また、「この作品にはスピリチュアルなレベルがあって、みなそれを感じてくれていた」とキャスト陣への厚い信頼も明かした。
一方、役所さんがヴェンダース監督から学んだことについて話題が及ぶと、「常に楽しそうにしていたので、その姿勢がキャストを励まし、大きな演出になっていた」という。
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役所さん演じる主人公・平山の姪を演じた中野さんは「本当にありのままのわたしとキャラクターを重ねて演じるような環境をヴィムが整えてくださったので、自然に演じることができた」と回顧、ホームレスを演じた田中さんは「映像にとらえたものは全部その場でやったもの。わたしはスピリットそのものです」と明かし、アオイさんは「ヴィムさんも、役所さんも周りを引き立ててくれる人だなと思った」と語った。
公式上映は、2,300人以上を収容できるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレにて満員の観客の中、開催。会場に監督とキャストが現れると、観客は総立ちで迎え、約5分間におよび拍手が鳴りつづけ、上映開始前から期待の大きさを感じさせる。
そして2時間5分の上映が終了するや否や、会場は一気に熱を帯び、観客は一斉に立ち上がって約10分に渡るスタンディングオベーションが起こった。感激につつまれる監督を役所さん、中野さん、アオイさん、田中さんが優しくつつみこみ、映画同様、あたたかく感動的な上映となった。
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熱気はそのままに、キャストのみ上映後の囲み取材を実施。熱いスタンディングオベーションを受けた気持ちについて聞かれると、役所さんは「みなさん褒めるの上手ですよね(笑)」と謙遜し照れつつも「監督が言ってたんですけど、褒められても自分がうまいと思わないで、けなされても自分がダメだと思わないで、映画で語りなさい。と。まさにそうだなと。でも今日みたいな暖かい拍手を受けて、ああお客さんが喜んでくれてるんだ。良かったな。と単純に思いました」と顔をほころばせた。
中野さんは「どういう反応がくるのかなと不安だったけど、きっと感じるものがあるんじゃないかという望みはありました。スタンディングオベーションで拍手と喝采を感じた時にそれが確信に変わりました」とコメント。
ベテランの田中さんは「映像のお仕事で(スタンディングオベーションを受けたのは)初めてです。嬉しいというよりも『役所さん、やったね!!』という気持ちで、抱きつきたかったです」と、主演の役所さんを気遣った。最後にアオイさんは「役所さんが爆発するわけでも、変身するわけでもない映画なんですが、日常の幸せ、平和の象徴が描かれた映画が評価された、ということがとても嬉しく思いました」と締めくくった。
『逆転のトライアングル』のリューベン・オストルンド監督がコンペティション部門の審査員長を務めている、今回のカンヌ国際映画祭。カンヌの常連であるヴェンダース監督が、日本を舞台にした本作で計21作品の中から最高賞となるパルム・ドールを狙う。主演男優賞はじめ各賞が発表となるのは、現地時間5月27日(土)となっている。