シャルロット・ゲンズブール主演、フランス映画界の次世代監督ミカエル・アースが手掛けた『午前4時にパリの夜は明ける』が公開中。ミカエル・アース監督が本作でオマージュを捧げたのは、80年代前半のフランス映画で永遠に輝き続けるパスカル・オジェ。そこで、G.W.にまとめて観たい、名匠たちに愛されたパスカル・オジェの作品をピックアップした。
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本作は80年代のパリを舞台に、結婚生活を解消したエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)が深夜放送のラジオ番組の仕事に就くことをきっかけに、それまで悲観していた人生を見つめ直していく物語。そんな本作には、アース監督がオマージュを捧げた数々の作品が登場し、80年代の映画愛に溢れている。
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特に80年代フランス映画界を代表する名優パスカル・オジェにオマージュが捧げられており、本作のキーパーソンともなる家出少女・タルラにその姿が投影された。
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1958年10月26日、フランス・パリ生まれのパスカル・オジェは、エリック・ロメール監督『満月の夜』(84)で第41回ヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。将来を期待されたが1984年、26歳の誕生日を目前にして急逝した。
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「パスカル・オジェは、信じられないほどの儚さと偉大な強さを併せ持つ、ユニークな人物です。彼女はこの映画を作りたいと思わせてくれた要素のひとつで、出演している映画がもっとたくさんあればいいのに、と思います」と監督。
「エリック・ロメール『満月の夜』やジャック・リヴェット『北の橋』は、彼女の衝撃的な運命に対するオマージュのひとつで、80年代の象徴として今も生きています。家出少女・タルラを演じたノエ・アビタに会ったとき、彼女はパスカル・オジェと完璧に呼応し、私が想像していたその時代を包含する彼女の特異な声に魅了されました」と、パスカル・オジェに憧れるタルラと演じたノエ・アビタについて語っている。
【1】『満月の夜』(1984/エリック・ロメール)
2人の男と2つの家の間で揺れ動く女性の感情を繊細に描き出す――
公開後2か月ほどで急逝したパスカル・オジェの遺作
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エリック・ロメール監督による「喜劇と格言劇」シリーズの第4作。パリ郊外のアパートで建築家の恋人レミと暮らすインテリアデザイナーのルイーズ。生真面目なレミと自由奔放なルイーズの間には口喧嘩が絶えない。レミとの生活に息苦しさを感じたルイーズは、パリに自分だけの部屋を借り、妻子持ちの親友オクターブと遊び歩くようになるが…。
パスカル・オジェが主演・室内装飾も担当し、本作でヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞したが、その直後に急逝。『午前4時にパリの夜は明ける』劇中では、家出少女・タルラ、息子・マチアス、娘・ジュディットの3人が人込みに紛れて映画館内に忍び込み、そこで偶然にも本作を観ることになる。■洋画専門チャンネル ザ・シネマメンバーズにて配信中。
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【2】『北の橋』(1981/ジャック・リヴェット)
パリの街で2人の女性が繰り広げる奇想天外な冒険
ジャック・リヴェット版現代の「ドン・キホーテ」。
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ジャック・リヴェット監督作の常連ビュル・オジェとその娘パスカル・オジェが共演した唯一の作品。パリの街をバイクで走る少女バチストは、刑務所から出所したばかりの閉所恐怖症のテロリスト、マリーと出会う。マリーの恋人が持っていた謎の地図を手にした2人は、地図をすごろくに見立てて街中をめぐるうちに陰謀に巻き込まれていく。
『午前4時にパリの夜は明ける』劇中では、家出少女・タルラとエリザベートの息子・マチアスの2人が映画館で本作を鑑賞する。タルラはパスカル・オジェが亡くなったことを聞いて悲しみに暮れ、亡き彼女の姿を目に焼き付ける。■洋画専門チャンネル ザ・シネマメンバーズにて配信中。
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【3】『ダウン・バイ・ロー』(1986/ジム・ジャームッシュ)
亡きパスカル・オジェに捧げる――
ジム・ジャームッシュの監督第3作。
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商業デビュー作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に続いてのタッグとなった常連ジョン・ルーリー、ジャームッシュが敬愛するミュージシャンのトム・ウェイツ、そしてイタリアの喜劇俳優ロベルト・ベニーニを迎えて描いた。
刑務所で同房になった3人の男が奇妙な友情で結ばれ、偶然見つけた抜け穴から脱獄に成功する。彼らが外の世界で行く当てもない旅を繰り広げ、やがてそれぞれの道を歩み始めるまでを独特のユーモアで描く。同作はかつてジム・ジャームッシュと親しい仲であった、亡きパスカル・オジェに捧げられている。U-NEXTにて配信中。
『午前4時にパリの夜は明ける』はシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国にて公開中。