2023年、最初のクールもあっという間に最終回の季節に。今期は、胸を打つ“エモさ”際立つ作品が多かった印象です。
今日は、毎クール全ての作品をチェックしているドラマニアな筆者が選んだ「勝手にベスト3」をご紹介。冬クールをハラハラ・ドキドキで彩ってくれた名作を厳選して、ふり返っていきましょう。
第1位:練り込まれた伏線と回収が癖になるドラマ「ブラッシュアップライフ」
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安藤サクラさん演じる主人公・近藤麻美が、意図せず平凡な毎日を何度もやり直すことになってしまう地元系タイムリープ・ヒューマン・コメディ「ブラッシュアップライフ」。バカリズムさんの描くシュールかつリアルで面白いセリフの数々がSNSなどでも大きな話題を呼んだ一作です。練り込まれた伏線と回収が、放送を重ねるたび、厚みを増して癖になる楽しさがありました。
中でも、麻美が自分の生きた時代を俯瞰で解説するモノローグが斬新で、大人になってふり返ると「案外些細なことだったな」と思えることでも、子どもにとっては「人生を大きく左右する局面」だったりするんですよね。小学生のシール交換、中学生のゲーム機没収、高校生の交際記者会見など、当時の心境に丁寧に寄り添ったシーンが大変印象的でした。
加えて本作では、麻美が“何のために人生をやり直すのか”が物語の鍵となっていました。自分のため? それとも、大切な誰かのため? 通常なら、「正直、そんなに何度も回想シーンを挟んだら飽きてしまう」という場面でも、「待って、もう一度あのシーンを見せて!」と求めている自分がいるから驚きです。全てのシーンに深い意味がある、新しい感覚のドラマを楽しませてもらいました。
第2位:生きることの意義と葛藤を説く愛の物語「100万回 言えばよかった」
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あるひとつの殺人事件を軸に、数奇な運命に翻弄されながらも奇跡を起こそうとする恋人×幽霊×刑事の懸命な姿を描いた、切なくて温かいファンタジーラブストーリー「100万回 言えばよかった」。井上真央さん×佐藤健さん×松山ケンイチさんの豪華共演でも注目の本作は、金曜日の夜、疲れた心に沁み渡る素敵なドラマに仕上がっていましたね。
これまでにも「亡くなった人の心残りを解決する」ドラマは数多くありましたが、このドラマは、そこに複雑な恋愛模様が絡んでくるから、一層切ないんです! 魂はそこにいるのに、一生一緒に生きていくという希望を共有できないもどかしさ。誰かを大切に思えば思うほど、“運命のいたずら”とも思える巡り合わせに、幾度となく胸を締めつけられました。
タイトルからも分かる通り、絵本の「100万回生きたねこ」がお話のモチーフとなっている本作。心の底から愛する相手に出会えた彼らは、幸せなのでしょうか。コミカルな要素も散りばめられている中で、やはり涙なしには見られない衝撃のラスト。最終回、最後の一秒まで目の離せない展開に、引き込まれ続けました。
第3位:建て前に隠れた本音に迫る「夕暮れに、手をつなぐ」
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婚約者を追って上京したものの、こっぴどく玉砕してしまった主人公の空豆(広瀬すず)が、音楽家を目指す青年・音(永瀬廉)との出会いで、人生を大きく変えていく青春ラブストーリー「夕暮れに、手をつなぐ」。互いに運命的な出会いだと認識しているにも関わらず、20代特有の夢や恋愛への恐怖心が重なって、なかなか踏み出せない初々しい関係が、視聴者の心を手玉に取ってヤキモキさせてくれたこちらのドラマ。
居心地の良い今の関係を壊したくないからこそ、わざとツケツケとした態度で本音を誤魔化してしまう“あるある”が存分に詰め込まれていて、思わずテレビに「どうして、そこ、素直に言えないの!」とツッコミを入れたくなり――まんまと、してやられた気がしました。
加えて、音くんのモノローグが詩的で美しい点もこの作品の大きな特徴です。「コタツの90度(触れそうで触れない間合い)が僕たちの距離だ」というのがドラマニアのお気に入りですが、皆さんにもきっと刺さった描写があったのではないでしょうか。視聴後、誰かと感想を話し合いたくなる、優しいラブストーリー物語。劇中で流れる音楽が、今も耳に残って離れません。
【最終回あらすじ】
デザイナーとしての夢のために、空豆(広瀬すず)は母親・塔子(松雪泰子)と一緒にパリへと旅立つ日が近づいていた。運命的な出会いから、忘れられない日々を一緒に過ごした空豆と音(永瀬廉)の、胸を締め付ける切ない恋の行方とは…。
以上、いかがでしたか? 次回は、春クールのおすすめをご紹介予定です。お楽しみに。