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【インタビュー】山田裕貴×松本まりか「自分がいた」映し鏡のトップランナーたち 極限状態から脱し紡いだ『夜、鳥たちが啼く』

『夜、鳥たちが啼く』で共演した山田裕貴と松本まりかに単独インタビュー。当時の心境や互いへの思について、じっくり聞かせてもらった。

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山田裕貴×松本まりか『夜、鳥たちが啼く』/photo:Maho Korogi
山田裕貴×松本まりか『夜、鳥たちが啼く』/photo:Maho Korogi
  • 山田裕貴×松本まりか『夜、鳥たちが啼く』/photo:Maho Korogi
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静寂の夜につんざく鳥の啼き声。その音に反応し、虚空を見つめるひとりの女。彼女を少し遠くから見つめる男――映画『夜、鳥たちが啼く』においての印象的な1シーンだ。言葉はない。たたずまいと表情だけで、雄弁なほどに心情を訴えてくる。役に身を投じた山田裕貴と松本まりかによる渾身の表現は、観客の心を何度も揺さぶり続けた。

物語は、同棲していた彼女に出て行かれ、作家業もふるわず人生を諦めかけた慎一(山田さん)のもとに、シングルマザーの裕子(松本さん)がやってくるところから始まる。定住先が決まるまで、息子アキラ(森優理斗)と仮住まいをさせてもらう裕子は母屋に、家主の慎一は仕事部屋として使っている離れで生活する。恋人でも家族でもない、友人と呼ぶにはいささか複雑な関係性の3人。傷を抱えた彼らが不器用にコミュニケーションを取り、ともに時間を過ごすことで癒やしを得て、少しだけ自分をゆるせるようになっていく。

現場で長い時間を過ごした山田さん・松本さんにとって、当時のタイミングでふたりが共演し撮影することは“救いの時間”だったという。というのも、ここ数年の彼らと言えば爆発的に知名度が上がり、多忙やプレッシャーのあまり自分を追い込むことも多かったはずだ。同じような経験を同じ時期にして感じていたふたりだったからこそ、互いを通して、役を通して、自分を見つめるような時間が助けになっていった。山田さんと松本さんへの単独インタビューでは、当時の心境や互いへの思について、じっくり聞かせてもらった。

言葉がなくても理解し合える関係


――『夜、鳥たちが啼く』を観ると、山田さんと松本さん以外に慎一と裕子は考えられないと思ってしまいます。共演経験も多くもともと信頼関係もあったでしょうが、「山田さんだったらから」「松本さんだったから」ここまでできた、という気持ちはベースにあったんでしょうか?

山田:僕はめちゃくちゃありました。まりかさんが、僕のことを本当に理解してくださっていました。

それは決して表面的なものではなく、マインド的な面においてのものです。僕が考えに対して「あっそれわかる! そうだよね」と共感をしてくださって、5段階で言えば多分5ないし4くらいに達しているんじゃないかと思います。

松本:アハハ。

――それは何か言葉で確かめ合ったりしなくても、わかるものというか。

山田:そんな多くを話したわけではなく…たぶん感じてきたこと、思っていること、いろいろなことが一緒なんだろうなと思うんです。そういうことが、今回、1対1でがーっとやる中での安心感としてありました。

松本:そうだよね。『夜鳥』の現場に入る頃、私はとにかくいろいろな仕事をしすぎて何も考えられないような状態でした。「何が楽しかったんだっけ?」、「何のためにやってたんだっけ?」となっていて、今思えば極限状態だったというか。プライベートで誰かに言うこともできなかったときに、初日、山田くんと会って、「えっ…! 自分がいた…!」とびっくりしたんです。

――極限状態の松本さんと同じような感じだと、すぐにわかったと?

松本:もう、(自分と)同じ目をしていたので。喋ったわけでもない。けど同じ境遇にいたのがすぐわかりました。すごく悩んでいたし、フラストレーションも抱えていたし、ものすごく忙しいし、隙間ないし…という。

これはタイミングだと思うんですけど、「ホリデイラブ」の撮影では、お互い違ったんですよ。あのあと、いきなり忙しくなったでしょ?

山田:うん、うん。

松本:その感じもすごく似ていて。境遇、タイミング、目が同じ。山田くんを見て、自分がいた感じがしたんです。それは「仲間だよね? 同士だよね?」ということじゃなくて。山田くんが言った「理解する」というか、彼のことを理解するというよりは自分のことを見ているようで、なんか理解できる感覚でした。

山田:本当にそうです。まりかさんに「大丈夫?」と言われるんですけど、本当に心配されている音と顔をしているんですよ。友達に「ねぇ、裕貴大丈夫?」と言われるのとは、違う意味を持つというか。

――同じような経験を同じ時期にしている方の「大丈夫?」は、心に沁みる度合いが違うんですね。

山田:分かってくれているからこその「大丈夫?」なんです。

松本:私、普段「大丈夫?」とあまり声を掛けないんです。でも、山田くんは見る度に「大丈夫?」って。生存確認じゃないけど、自分にも言っているような感じなんです。何もできないけど、しないけど、彼にかける「大丈夫?」だけは人と違う。

山田:うんうん。経験した人の「大丈夫」というのが伝わってくる感じでした。

――慎一と裕子が似た者同士のように、おふたりも。

松本:そうですね。やっぱり山田くんだったからこそ、本当に慎一と裕子みたいな似た者同士(になれた)。足りないかけらをものすごく欲している、でもどうすればいいか分からない、みたいな状況がふたりともリンクしていました。

山田:例えば、この作品にはラブシーンもあるじゃないですか。本来、すごく気を遣うはずなんですけど、リラックスして臨むことができる不思議さがあったんです。普段はカットがかかったら、準備するまで1回離れたりしますけど、ずっとその場にいて空気感を保つことができました。まりかさんは本当に「すげえな」と。安心感があって、とても助けられました。

松本:ラブシーンのときも触れていないと不安というか、どうしていいかわからない、触っている安心感が本能的に出てきた感じがありました。その感覚が作品に映っていたと思うので、それがなんか良かったな~って。


《text:赤山恭子/photo:Maho Korogi》

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