本木雅弘との出会いで切り拓かれた映画との関わり
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――これまで関わってこられた作品を見ると『GONIN』、『双生児 -GEMINI-』、『おくりびと』など、本木雅弘さんが出演されている作品が多いですが本木さんとは以前からお仕事を?
そうなんです。もともと、本木さんが独立された頃に知り合って、それからずっとヘアメイクを担当させてもらっていました。『GONIN』(1995年)も本木さんに声を掛けていただいて、当時の僕は映画業界のことは何も知らず、本木さんのヘアメイクだけを担当させてもらったんですが、それが映画業界で仕事をするきっかけになり、その後『白痴』(1999年/ヘアメイク監督)、『双生児-GEMINI-』(1999年/ヘアメイク監督)とたて続けに映画の仕事をやらせてもらいました。
――本木さんの衣装とパフォーマンスが大きな話題を呼んだ1992年の紅白歌合戦の際も、ヘアメイクを担当されたそうですね?
そうです。あの時はリハーサルでスタジオに行ったら、「こんなことをやろうと思っている」と聞かされて、本木さんらしい強烈な茶目っ気だなと思いましたね(笑)。僕はヘアメイクで入っています。あの当時、流行っていたグランジ(1990年代初頭のパンクとハードロックを融合させたムーブメント)のテイストになっています。
――先ほど名前が出た三池崇史監督とも『殺し屋1』(2001年)からという、かなり長いお付き合いなんですね?
そうです。『殺し屋1』は浅野忠信さんのヘアメイクデザインで入りました。浅野さんともそれ以前から仕事をさせていただいていたし、あの作品は衣装を北村道子さんが担当されていて、北村さんからのお声がけもありました。
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――肩書の名称の話に戻りますが、野田秀樹さんが演出を務めるNODA・MAPの公演(「贋作 桜の森の満開の下」、「Q:A Night At The Kabuki」ほか多数)をはじめ、数々の演劇作品にも参加されていますが、こちらは“美粧”という肩書になっていることが多いですね。
「美粧」はヘアメイクプランナーですね。舞台のクレジットの並びって漢字が多いじゃないですか? そこに“ヘアメイク”と入るのも無粋だなと思いまして、美粧という言葉を使わせてもらっています。
――「美粧」というのは「美しく装うこと」という意味を持つ言葉で、昔は美容院、ヘアサロンのことを美粧院と呼んでいたとか。この言葉自体、聞き慣れないという人も多いかと思います。
こうした肩書に関しては、自分の中で、どこかで「わからなくていいや」という気持ちがあるのかもしれません(笑)。いや、わかってほしいと思ってはいるんですけど、わかってもらわなくてもいいやという、反対の気持ちが働いている部分がある気がします。
ただ“人物デザイン監修”という言葉は僕が決めたわけではなく、実はNHKが決めた肩書なんです。