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ゴールドヴァッサー監督も発達障がいのある息子を持つ父親であり、身近なテーマだったため、最初は同映画製作に躊躇したそう。「約10年前にある親子の実話を聞く機会があり、腎不全を患う高齢の父親に、知的障害を持つ息子が自分の腎臓を提供しようとしたそうです。私にもスペシャルニーズの(特別支援を必要とする)息子がいるので、私が映画化するにふさわしいエピソードだと思われたのでしょう。しかし私はこのような重い題材を扱うことに抵抗があり、この題材から逃げてきたわけです。ただ気になってはいました」と始まりを語り、「何年か経ち、この映画の主人公役のネボ・キムヒさんとご一緒した時に、この企画のことを話したら『是非やろう!』と賛同してくれて、いろいろとアイデアを交換していくうちに、私の心配を払拭してくれたのです。彼なくしてこの映画が撮られることはなかったと思います」とネボ・キムヒの存在の大きさを表した。
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また「一般の方がスペシャルニーズの人たちに対して持っているイメージに何らかの変化を起こす、映画を見た人が、スペシャルニーズの人たちのことを理解したい、という気持ちになって欲しい、そういった願いを込めて、完璧なストーリーにしたい」と思いを語り、「いざ映画作りを始めると、私にはとても簡単な作業でした。自分が何を撮りたいのか、明確に分かっていたからです。この映画で描かれることについて、私は全てを理解できるのです。いつもだと悩んだり、何バージョンか撮っておこう、ということがありますが、今回は迷いが一切なかったですね」と撮影をふり返った。
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父と息子を描く本作で主人公ガディは、監督の息子を反映させたキャラクターだと言い、「劇中にも出てくるのですが、メガネをかけたままシャワーを浴びたり、出会う女性をすぐ口説いたりね(笑)。言葉遊びや、彼のユーモア、ジョークも取り入れています。映画の中でガディが読む歌の歌詞は、息子が10歳の時に書いた詩をそのまま引用しています。愛や幸せについて、障害があると言われている10歳の子が書いた詩です」と様々な部分が反映されているそう。
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そんなガディを劇中で演じたネボだが、撮影に入る前の1年間、監督たちと一緒に共同作業をしたという。監督は「脚本ができてからは、私の息子が暮らしている、スペシャルニーズの人たちが住む村に実際に暮らして、撮影の準備をしてもらいました。私の息子の立ち方、歩き方、笑い方をじっくりと観察して取り入れています」と入念な役作りについて明かした。
そして、もうすぐ迎える日本での公開に向けて「私が映画を作る上で必要だと感じていることは、観客とどれだけ繋がることができるか、ということです。この作品は何か強いメッセージというよりは、映画の中で、意志の力や知恵や正義感によって困難を乗り越え成長していく『靴ひも』の主人公と一緒に『感情の旅』をして、何か『気づき』を持ってもらえれば、と思います」と日本の観客へメッセージを寄せた。
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『靴ひも』は10月17日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。