ファンタジードラマの良さ「いろんなことを気づかせてくれる」
佐野さんも飯豊さんも、本作に出演したことで気づかされたことが数多くあったという。
佐野:やっぱり、これはこの作品の藤野良太プロデューサーが伝えたかったことだと思うんですけど、いつ死ぬかわかんないから、好きな人に「好き」と伝えたり、家族に「ありがとう」と言うということは、いますぐにでもした方がいいなと。後回しにしたら、何が起こるかわかんないんだってことは改めて深く実感しましたね。
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飯豊:私は、相手を好きになるということで、楽しい気持ちになるんだけど、絶対にどこかに寂しい思いがあるんだなって。でも同時に温かい気持ちにもなるし…。同じことを藤野さんも言ってて。何て言ってたかな…ちょっと調べていいですか?(とスマホを取り出す)
佐野:え? 調べる? 調べるってどういうこと(笑)。
飯豊:あった! (スマホを見つつ)「人は人を思うがゆえに苦しんだり、悲しみを背負うこともありますが、その傷を埋めてくれるのも人の優しさ、温もりだったりします」って。深いな、本当にそうだなって思います!
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藤野良太プロデューサーはフジテレビで『恋仲』や『好きな人がいること』といった王道の恋愛ドラマを手がけてきた人物。恋愛リアリティーショー全盛の時代に恋愛ドラマ、しかも死んだ者がよみがえるというファンタジー要素を含んだドラマを制作するというのはある意味、大きな挑戦である。いまの時代における恋愛ドラマの在り方とは? 生の感情をさらけ出すリアリティーショーにはなくて、“作り物”であるドラマだからこそ伝えられる感情とは?
飯豊:今回の作品、すごく丁寧に作ってるんですよね。(航太や芽衣、その仲間たちの中に)自分のことだけを考えている人がひとりもいないんですよね。そこかな? もちろん、恋愛も大切なんだけど、もっと本質的な…人として大切なことというか…例えば、航太がお母さんと顔を合わせないという決断をするけど、実はそれが本当に大切に想っているということだったり。そういうのってなかなかリアリティショーだと見えにくいというか、どうしても目の前の恋愛で「自分がどうするか?」ということになりがちだけど。恋愛ドラマだと、そういうすごくキレイな部分をファンタジーとして感じることができるじゃないですか。私は本来、そっちの方が面白いなと思ってました。ファンタジーがいろんなことを気づかせてくれるってドラマの良さだと思う。
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佐野:大げさな言い方ですけど、藤野さんと出会えてよかったなと思います。すごいですよ、あの人…。作品に対する愛もすごいし、長野で撮影だったんですけど、こんなに現場に足を運んでくれるプロデューサーもなかなかいないなって。ちょっとでも時間ができるとすぐに来てくれて、忙しいから「帰んなきゃ」ってすぐ帰るんですけど(笑)。キャストとのコミュニケーションだけでなく、ひとりひとりのスタッフさんとのコミュニケーションもすごく丁寧で、脚本ができておしまいじゃなく、現場づくりもされてて「すごいな」って。
飯豊:丁寧だよね。航太と芽衣の2人のシーンも、悲しくてその空間にいると泣いちゃいそうになるんですけど「いや、ここは泣かないよ」とか、見る人の心に響かせるために私たちの演技をコントロールしてくださるんですよ。だからこそ毎回泣けるんだと思います。私たちはどうしても感情で動きすぎちゃうところがあって、でも感情に流されたままだったら、あそこまでできなかったんじゃないかなって。
第7話とか切なくてすぐ泣いちゃいそうになったんですけど…航太も「ここは泣かないよ」って言われてたよね? 泣けるシーンを作るために「このパートでは泣かないで」とか。(リアルな感情ではなく、あえてコントロールすることで感動を伝えるというのが)すごいなぁって思いますね。