『Alice And The Mayor』(ニコラ・パリゼール監督/フランス) 『And Then We Danced』(レヴァン・アキン監督/スウェーデン) 『Ang Hupa』(ラヴ・ディアス監督/フィリピン) 『Song Without a Name』(メリナ・レオン監督/ペルー) 『Ghost Tropic』(バス・ドヴォス監督/ベルギー) 『Give Me Liberty』(キリル・ミカノフスキー監督/ロシア) 『初恋』(三池崇史監督/日本) 『To Love To Sing』(ジョニー・マ監督/中国・カナダ) 『Dogs Don't Wear Pants』(ジュッカ=ペッカ・ヴァルキーパー監督/フィンランド) 『Deerskin』(カンタン・デュピユー監督/フランス)(写真) 『The Particles』(ブレイズ・アリゾン監督/フランス) 『Lilian』(アンドレアス・ホルヴァート監督/オーストリア) 『Oleg』(ジュリス・クルシエティス監督/ラトヴィア) 『Blow It To Bits』 (レック・コワルスキー監督/米) 『Perdrix』(エルワン・ル・デュック監督/フランス) 『For the Money』(アレホ・モギランスキ監督/アルゼンチン) 『Red 11』(ロバート・ロドリゲス監督/アメリカ) 『Sick, Sick, Sick』(アリス・フルタド監督/ブラジル) 『The Light House』(ロバート・エガース監督/アメリカ) 『The Orphanage』(シャールバヌー・サダト監督/アフガニスタン) 『Tlamess』(アラ・エディンヌ・スリム監督/チュニジア) 『An Easy Girl』(レベッカ・ズロトヴスキ監督/フランス) 『Wounds』(ババク・アンヴァリ監督/イラン・英) 『Yves』(ブノワ・フォルジャール監督/フランス) 『Zombi Child』(ベルトラン・ボネロ監督/フランス)
『Alice and the Mayor』(ニコラ・パリゼール監督/フランス) ニコラ・パリゼール監督の2本目の長編作品。前作『The Great Game』(15)はメルヴィル・プポーとアンドレ・デュソリエが主演した、一種の政治ドラマでした。役者の演技は見ていて気持ちよかったものの、少し話が飲み込みにくくて難儀した記憶があります。今回も役者は豪華で、ファブリス・ルキーニとアナイス・ドゥムスティエ。これだけで絶対見たいです。
『To Love To Sing』(ジョニー・マ監督/中国) マ監督は10歳でカナダに移住しており、N.Y.で映画を学び、そして中国で映画を撮っています。1作目の『Old Stone』(16)はベルリン映画祭「フォーラム部門」でプレミアされ、トロント映画祭ではカナダ映画の新人賞を受賞するなど好評。『Old Stone』は社会の強者と弱者の差を見せつけた、痛烈にペシミスティックな社会批判のドラマで、希望は無いものの映画としての強度は確かなものがありました。
新作『To Love To Sing』は前作とは少し趣が異なるようで、伝統的な歌劇団を率いる女性が経営難に陥り、劇団を維持しようと奮闘する物語です。僕は先の香港出張の際にクリップを見ており、リアルとファンタジーがミックスされたような映像がとても美しく、印象に残っています。
今後存在感を増していく監督であることは間違いでしょう。要チェックです。
『Dogs Don't Wear Pants』(ジュッカ=ペッカ・ヴァルキーパー監督/フィンランド) Jukka-Pekka Valkeapaa 監督の名前の読みに全く自信はありませんが、とりあえずヴァルキーパー監督という表記で勘弁してもらいましょう。3本目の長編です。僕は2本目の『They Have Escaped』(14)を観ていますが、未成年の更生施設に務める吃音の青年職員が問題児の少女とともに脱走する逃避行で、予想外の展開と刹那的な青春の美しさが凝縮された秀作でした。この難しい名前はあの作品の監督だったか!と今回喜んでいる次第です。
『Blow It To Bits』(レック・コワルスキー監督/米) ポーランド系アメリカ人であるコワルスキー監督は70年代から活動しており、セックス・ピストルズを中心にパンク・ムーブメントを記録した『D.O.A』(80)で世に大きく知られるようになった存在です。その後もジョニー・サンダースやニューヨーク・ドールズやラモーンズの映画を作ったりして、ともかくNYパンクのとても近くにいた人ですね。
『For the Money』(アレホ・モギランスキ監督/アルゼンチン) 78年生のモギランスキ(Moguillansky)監督、6作目の長編です。僕は過去作を未見ですが、ロカルノやベルリンで上映実績があり、国内でも作品賞を数度受賞している実力派と呼んでよさそうです。作風は分かりませんが、昨年アイ・ウェイウェイに関する短編ドキュメンタリーを作っていることから、モギランスキ監督の関心事の傾向を推測できるかもしれません。
『The Orphanage』(シャールバヌー・サダト/アフガニスタン) アフガニスタンの映画監督、しかも女性ということで、大きな注目を浴びているサダト監督、2本目の長編です。1本目『Wolf and Sheep』(16)は監督が20歳の時に欧州の主要な映画ファンドをことごとく取り入れて製作され、カンヌの監督週間でプレミア上映されました。田舎の地で暮らす羊飼いと子どもたちの日常を描くもので、戦争もテロもないアフガンが描かれることで逆説的なメッセージを感じ取れる作品でした。
『Tlamess』(アラ・エディンヌ・スリム/チュニジア) チュニジアのスリム監督は長編デビュー作『The Last of Us』(16)がヴェネチア映画祭に出品され、見事新人監督賞を受賞しています。海を渡って越境を試みる男のサバイバルを、ほぼ全編セリフなしで過酷に美しく描いて独創性に満ち、高評価もむべなるかなという意欲作でした。本作はそれに続く長編2作目です。
『Yves』(ブノワ・フォルジャール監督/フランス) 俳優としても活躍するブノワ・フォルジャールの監督第3作。前作の『Gaz de France』(15)は、カンヌで最近存在感を増しつつある並行部門「ACID」で上映されています。ちなみに「ACID」というのはフランスのインディ系の低予算映画が集まる部門で、映画監督たちが作品を選定することが特徴です。「監督週間」は監督協会が主催ですが、選定は監督ではなくプロの選定ディレクターが任命されています。