
映画と音楽が「開放になっている」
「これまで私が演じてきた役は、それぞれの理由でヒネくれていた(笑)。でも、どの役にも感情移入できたの。そんな中でもチャーリーと(『スウィート17モンスター』の)ネイディーンはちょっと似てるかな。彼女たちは2人とも“自分とは何か?”の問いに向き合っている。それって、誰もが通る道よね。生まれや環境は関係ない。混乱したり、不安に陥ったりしながら答えを求めて模索するのは私自身も同じだった」。

孤独を抱えるチャーリーは、亡き父と楽しんだ“車いじり”を1人続けながら心の穴を埋めようとする。そのプロセスがやがてチャーリーと謎の地球外生命体を引き合わせるのだが、ヘイリーの場合は「幸運なことに、私には映画と音楽があった」という。
「チャーリーにとっては古い車いじりが、自分の開放になり、逃避にもなっている。私にとっての“車いじり”は映画と音楽ね。スタジオで音楽を作ったり、撮影現場でお芝居をしたり。もちろん、ビーチを歩きながら新鮮な空気を吸ったり、好きな音楽を聴いたり、大好きな人たちと一緒に過ごしたりするのも好き。そのすべてが開放になっているの」。

一緒に仕事がしたい監督は「たっくさん!」
仕事を楽しみ、自分の時間を楽しむ。彼女が等身大を演じてこられた理由は、その姿勢にありそうだ。とは言え、デビュー作『トゥルー・グリット』では弱冠14歳でアカデミー賞候補になり、いまはこうして大作映画に堂々主演。理想が高くなる一方では?
「恵まれてきた分、それはあると思う。その中で大切にしたいのは、作品の持つメッセージ性ね。作品を通して発信できる立場になれたら素敵だと思う。メッセージを背負えるような、強い女性を演じたい。こう言いつつ、行ったことのない土地で撮影する作品だったら、それだけで“やる!”と言いたくもなるのだけど(笑)」。

また、「監督や共演者の存在も作品選びの大事なポイント」と付け加えるが、組んでみたい監督は「たっくさん!」。そして、「これだけは絶対に言っておかなくちゃ」と切り出す。
「コーエン兄弟ともう一度組みたい。『トゥルー・グリット』のときの私は13歳で、もちろん彼らがどれほど偉大か十分理解していたつもり。撮影中も、作品の完成後も、大勢から“君は本当にラッキーだ”と言われたわ。分かってたのよ、それは。十分にね。でも、幼い私は“ええ、そうね。OK”って感じだったと思う(笑)。その後、年齢を重ね、お芝居を続けてきた中で、あれは本当に幸運な出来事だったと実感している。もう一度彼らの現場に立てるなら何でもするわ」。

本作を通してアクション映画が大好きに
一方、尊敬する俳優はというと、「それもたくさんいる(笑)」。強いて挙げるなら、『はじまりのうた』で共演したマーク・ラファロとキャサリン・キーナーだそうだ。
「俳優の先輩としても、人としても大好き。彼らは映画やドラマにすごく詳しくて、撮影の合間にもいろいろな作品について話していたの。そのほとんどが私の知らない作品だった。私は話に加わりたくて、お願いしたわ。“私が見るべき作品のリストを作って!”とね。そしたら、2人は撮影が終わるころに長いリストをくれた。100作くらいかな」。

「でも、まだ全作を制覇してはいないの」と正直に明かすのもヘイリーの飾らない魅力。そこで、現時点での印象的な1作を挙げてもらった。『ティファニーで朝食を』だ。
「唯一だったかな…すでに見ていた作品だったから、リストにあってすごく嬉しかった。早速見直したら、作品の素晴らしさや内容の深さが伝わってきて。最初に見たときから年齢を重ねていたのもよかったと思う。映画って、そういうところがあるわよね」。

映画と共に人生を歩んできたヘイリーらしい言葉。さらに、「俳優業のいいところは、その作品ジャンルの本当の面白さを体感できるところ」とも語る。
「『バンブルビー』の撮影を通して、アクション映画が大好きになったもの。これまでは、ラブコメディ、スリラー、ヒューマンドラマが好きだったのだけど。あと、誰かと一緒に楽しめるのも映画のよさね。『トランスフォーマー』は以前、兄と一緒に見たの。兄はレースカーのドライバー兼メカニックで、『トランスフォーマー』にとっては最高の観客だから。一緒に楽しむことで絆ができたし、クールな体験だった」。
まさかの兄妹出演が実現!?

となると、お兄さんにとっては、大好きな『トランスフォーマー』シリーズの前日譚に妹が主演することに。さぞ嫉妬されたのでは?
「そうなの! なだめるわけじゃないけど(笑)、協力してもらったわ。例えば、チャーリーが廃車寸前のビートルを運転しながら家に帰るシーン。スタントドライバーがやるカットがあったのだけど、トラヴィス(・ナイト監督)の思い描く画にならなくて。そのとき、撮影を見に来ていた兄が私に囁いたの。“僕ならできるよ”って。だから、“あ~、トラヴィス。却下してもらって全然構わないのだけど、兄にはできるみたい”と提案して…。完成した本編には、兄が運転したカットが入ってる」。
主演女優として大勢の観客に夢を与えながら、“兄孝行”もばっちり。やはり人生のバランス感覚抜群のヘイリーであった。
