2人はどこか対等、バディ感のある関係
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日本での豪華過ぎる一夜の背景にはもちろん、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』がある。エディは『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』に続きニュート・スキャマンダーを、シリーズ初参加のジュードはアルバス・ダンブルドアを演じた。「ダンブルドアは自分では何もせず、ニュートにやらせる(笑)」とエディは2人の関係を茶化すが、J.K.ローリングの言葉によれば「ダンブルドアとハリー・ポッターの師弟関係とは違い、ダンブルドアとニュートはもっと対等」。「長年の友人同士」というエディとジュードも年齢差10歳でありながら、どこか対等なバディ感を漂わせる。
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「最初に会ったのは、ロサンゼルスのベルエアで開かれたパーティのときだね。すごくハリウッドっぽいパーティで、“ワオ! ジュード・ロウがいる!”と興奮した」とエディ。「そうだっけ?」と記憶をたどるジュードが、「マイケル・グランデージの舞台に出ているときにも会ったよ」と返す。ジュードは名演出家グランデージの「ハムレット」「ヘンリー5世」などに出演。「でも、そのときは目が一瞬合ったくらいだったし」と笑うエディも、グランデージ演出の舞台「RED」や「リチャード2世」に出演している。「彼が芸術監督を務めていた劇場ドンマー・ウェアハウスで、いくつかの舞台に立ったんだ。ジュードもマイケルとは何度も組んでいるから、彼が僕らを結びつけたとも言えるね」。
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仲間意識が強く、共通点も多い
「あとは、こうしてインタビューを受けているとき、共通点の多さに気づいた。僕らは2人とも整理整頓が大好き、とかね(笑)」とも明かすエディ。「もちろん、今回の共演が僕らにとって大きいのは疑いようもないけど」とジュードが続ける。「一緒に何かを作ることで、信頼と絆が生まれる。それらを共有しながら、冒険に出る仲間でもあるのだから」。
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「しかも、僕らの映画はシリーズだから、1つの劇団で1シーズンに数本の芝居を上演する感覚とでも言えばいいかな。昔ながらの劇団みたいに、仲間意識がすごく強い」とも語るエディ。対等なバディ感も、そこから生まれているようだ。「俳優って、そういうものじゃないかな。プロの役者になって初めての舞台では、あのマーク・ライランスと一緒だった。でも、素敵なことに、彼のような名優とも舞台上では対等になれる。それは映画でも同じこと。クリーデンス役のエズラ・ミラーは僕よりずっと若いけど、彼が僕を頼ることもあれば、僕が彼に頼ることもある。役者の成長というのは、上下関係のある世界で上り詰めるのとは違うんだ」。
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「よく“若手にどんなアドバイスをする?”と聞かれる状況になりつつあるけど(笑)、答えはこうだ。“聞かれるまでは、アドバイスをしない”。僕らは対等だし、歩む道は各々のものであるべきで、干渉するのはよくないから。でも、何かを聞かれたら、もちろんアドバイスをする」とは、ジュードの指導者論。では、ダンブルドアはどうか。「ニュートにやらせる(笑)」という冗談はさておき、彼がニュートに託す戦いは思いのほか過酷だ。ニュートは世界の支配を目論む“黒い魔法使い”、グリンデルバルドに挑むことになる。
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万人に響くアウトサイダーの物語
「J.K.ローリングはアウトサイダーの物語を描く。なのに、万人に響くのはなぜか? それは、世の中にはインサイダーなどいないから。どんなにクールで、輪の中心にいて、生きる術をそれなりに確立してはいても、不安はある。グリンデルバルドはその不安を利用するんだ。一方、ニュートは変わり者ではあるけど、アウトサイダーである自分に満足し、ありのままを受け入れている」と、ニュートの戦いの核心に触れるエディ。
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隣で頷くジュードは本作を「決断の物語」と言い表す。「でも、本当は決断など必要ない。こちらか、あちらか。人生はもっと複雑で、どちらにも属さない人生がたくさんあるのに、グリンデルバルドは“こちらに来い”と決断を迫る。すると、人は焦って間違った決断をする。どちらにも属さずに生きることは罪でも何でもないのに」。
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2人の中で最も揺るぎないもの、それは子どもの存在
ありのままを受け入れ、自分の人生を歩む。シンプルだがときに困難を伴うことを、2人はどう実践しているのか。「自分の人生を歩む。まさにそれだよ。家族を持ち、変わらない普通の日々に戻る。その中で最も揺るぎないものは、子どもたちの存在だね。彼らが僕を日常に戻してくれる」とジュード。エディも「その通り」と同意する。「確かに、僕らは世界中を飛び回れるし、華やかな世界にいるとは思う。でも、一方では24時間おむつを替えているわけで(笑)。地に足をつけ、現実を生きないと」。
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「僕らが俳優だろうが、まるで関係ないからね。子どもたちにはただの父親」と笑うジュードだが、もちろん彼らは俳優としても“現実を生きている”。俳優ジュード・ロウの心得はこうだ。「仕事を一生懸命する。時間に遅れない。人の話をきちんと聞く。想像力を使う。そして、自分の情熱を信じ、愛する。好奇心を持ってね。基本的なことだと思うよ。よく聞き、よく見て、よく努力する。何もせず、簡単に手に入るわけじゃない。僕らはものすごく幸運な立場にいる。だからこそ、努力を怠ってはいけない。自分できちんと準備しなくちゃいけない。ただし、他人はどうでもいいと思ってはいけない。周りに興味を持つべきだ。作品はみんなで作るものだから。周りを拒絶してはいけない」。
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「ジュードの完璧な答えに100%同意するよ」と頷きながら、「でも、そうだね…。あえて言うなら、好奇心を持ち続けること。それが一番の鍵かもしれない」と噛みしめるように言うエディ。「自分に対しても、周りに対してもね。好奇心こそが、原動力だと思う」。
対人関係が苦手なニュートにも、周りに対する好奇心はある。ただ、その発揮し方がぎこちないだけ。「周りを拒絶しない」。「好奇心を持ち続ける」。そんな彼らの作り上げたニュートが、ダンブルドアが、複雑で、それでいてチャーミングな理由が分かった気がした。
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