最新3作品でのお芝居を紐解きながら、今後、どんな俳優として活躍するのか考えてみたい。
久しぶりの主演作「GIVER」
「ぶっせん」(TBS/'13)をはじめ、すでに連続ドラマでの主演経験はあるが、以前に増して吉沢さんの注目度は格段に上がっているのではないだろうか。

映画『オオカミ少女と黒王子』('16)で共演した二階堂ふみから、フランスの美男子の代名詞ともされる名優“アラン・ドロン”のような輝きがあると賞賛されていた通り、整った顔立ちはまさにイケメンそのもの。“若手イケメン俳優”の登竜門といわれる「仮面ライダー」シリーズに、福士蒼汰らと共に出演していたのも納得できる。
しかし、昨年は『ラストコップ THE MOVIE』、「トモダチゲーム」シリーズなど、悪役のお芝居で新境地を開拓。狂気的な怖さというより、冷たさを感じる演技が特徴的で、観ていて背筋が凍るような表情も見せていた。
今回のドラマ「GIVER」では、復讐代行をする主人公・義波(ぎば)を演じている。生まれつき感情が欠落していて、どんなに残酷な依頼でも淡々と、次々に復讐をこなしていく。1話では、ド派手な爆発の演出、ゲスト出演の吉村界人の狂気の芝居も加わって、視聴者を作品の世界観に引き込んだ。何より、穏やかな雰囲気から涙、冷酷な表情まで1本のドラマでコロコロと表情を変えた吉沢さんはさすがだった。

1話の雰囲気と変わって2話では、ゲスト出演が板尾創路なのも納得のエロスの要素が強調され、復讐代行の同僚も登場した。義波自身に迫るような描写はまだ少ないが、これから回を重ねるごとに深まっていくだろうと期待できる。
1話完結でいつからでも観やすいのが嬉しい点だが、復讐の業務によって各話で見せる表情がまったく違うので、吉沢さん演じる義波の毎話の変化を楽しみたいドラマだ。
愛され年下男子「サバイバル・ウェディング」
このドラマでは、広告代理店で働く柏木祐一を演じる。「GIVER」とは打って変わって、モテモテの愛されキャラ。そのうえ、波瑠演じる主人公のさやかが憧れる年下男子とあって、恋の予感に期待大。
これまで、『オオカミ少女と黒王子』や『アオハライド』('14)など青春恋愛映画にも出演した経験のある吉沢さんだが、実は自身がモテる役を演じるのは珍しい。吉沢さんが高校生役で出演した映画『ママレード・ボーイ』でも、学校の人気者というよりは“カッコいいけど、どこか近寄りがたい”存在で、最終的には両思いになるものの苦い失恋も経験している。さらには、これまでは高校生役を演じることが多かったため、大人の恋愛ストーリーもほとんどない。

今回のドラマは、恋愛要素があるため夏にぴったりの爽やかなシーンが多そうだが、“モテ男子”として新たな一面が見られることに期待したいものだ。2話からは登場シーンも増え、今後はさらに波瑠さんとの絡みも増えそうで嬉しい。
映画『BLEACH』でのアクションシーン
主人公・黒崎一護を演じた福士さんとは、「仮面ライダーフォーゼ」(’11~12)、『ぼくが処刑される未来』('12)以来の共演となる。吉沢さんは弓状の武器を操ることのできる“滅却師(クインシー)”石田雨竜を演じている。
一護とはクラスメイトでありながら、一方で敵対もしていた間柄だが、クライマックスでは共闘する場面も。CG制作が丁寧に行われた分、クライマックスはド迫力で、マンガから抜け出てきたかのようなリアリティがあり、観ていて引き込まれる。撮影中にはないはずのCG部分とも見事に融合していて、クオリティの高いシーンに仕上がっていた。

特に、雨竜は一護ほどの動きこそないものの、吉沢さんの身体能力の高さが十分に伺えるクライマックスだった。シネマカフェのインタビューでも話していたが、CGの弓を引く芝居は非常に難しく、細かい調整が必要だっただろう。それを不自然のないよう見せていたのは、さすがの一言だ。
なお、8月17日(金)に公開を控える『銀魂2 掟は破るためにこそある』でも、前作の実写映画『銀魂』('17)に引き続き、吉沢さんが真選組・沖田総悟役で続投する。マンガ原作を実写化する際、ビジュアルの再現度の高さには定評のある吉沢さんだが、『BLEACH』でも雰囲気をつかんでおり、もちろん『銀魂』も納得の仕上がりだ。

加えて『銀魂』シリーズは、アクションコメディである。昨年は『斉木楠雄のΨ難』でもコメディに振り切ったお芝居に挑戦しており、新たな吉沢さんが観られた。今年の『銀魂2』では、『BLEACH』の経験を経てさらにパワーアップしたアクションと、コメディに期待できそうだ。劇場で、作品による吉沢さんの違いを楽しむのも良いかもしれない。
映画『あのコの、トリコ。』も控え、ますます勢いに乗る吉沢亮
すでに、ドラマや映画で吉沢さんを堪能できるラインナップが揃っているが、10月5日(金)公開の映画『あのコの、トリコ。』では、ヒロインである新木優子とW主演を務めている。現在24歳の吉沢さん、今後もしばらくはマンガ原作の作品への出演も続くのではないだろうか。

さらに2019年4月からは広瀬すず主演の朝ドラ「なつぞら」への出演も決定している。“朝ドラ俳優”と紹介される日も近いだろう。より幅広い層に認知され、これまで以上に主演作にも増えていくのではないだろうか。
まずは、いち視聴者としても、同時進行のドラマを無事に終え、今夏を乗り切ってくれることを応援したい。