『Rafiki (Friend)』(ケニア/ラヌリ・カヒウ) ケニアの映画作家ラヌリ・カヒウ監督2本目の長編です。カヒウ監督はナイロビで生まれ、英国と米国の大学で学んだ後、処女長編『From a Whisper』(09)を監督しています。僕は残念ながら未見ですが、アフリカでいくつも受賞を果たすなど高い評価を獲得し、一躍ケニアの重要なアーティストのひとりとして認知されるようになっています。
『In My Room』(ドイツ/ウルリッヒ・ケーラー) ドイツのウルリッヒ・ケーラー監督新作。ベルリン映画祭で監督賞を受賞した前作『スリーピング・シックネス』が2011年だから、なんと7年振りだ! 同作は東京国際映画祭でも上映したので、いまだに強い印象が残っています。アフリカ眠り病を調査する医師夫婦が抱える問題のドラマと、数年後に同地を訪れる青年の物語が一見何の脈略もなく2部構成で繋がっている作りで、思考中枢を刺激される作品でした。
『In My Room』の内容を探してみると「夜遊びにも飽きて人生に退屈している男が、ある朝目覚めると周囲の人間が消えていることに気付くが、何が起きたか分からない」の一文しか見つかりません。7年振りなんだからもうちょっと教えてよ!と叫びたいところですが、「究極の自由という恐ろしい贈り物についての映画」だそうです。うん、面白そう。
『The Dead and The Others』(ポルトガル/ジョアン・サラヴィサ&ルネー・ナデル・メソラ) ジョアン・サラヴィサ監督は2009年に短編でカンヌのパルムドールを受賞し、マノエル・ド・オリヴェイラ監督の助監督も務めた経験を持ち、初長編『Montanha』(15)はポルトガルの主要な映画賞に数多くノミネートされるなど、堅実にキャリアを積み上げているように見えます。
『Montanha』は14歳の少年の日々に密着するドラマで、無為に過ごしていた生活が祖父の死によって変化する少年の動揺を長廻しで追っていく、アート色の極めて強い作品でした。『Montanha』で助監督を務めていたルネー・ナデル・メソラを共同監督に迎えて作ったのが新作『The Dead and The Others』で、今回はガラリと趣が変わり、ブラジル北部の原住民族のドラマを描いています。
おそらく親族の「死」が過去作と共通したテーマとしてあると思われ、『The Dead and The Others』では、亡くなった父の魂をかの国に送り出すべく、喪に服す期間を終えて葬儀の祭の準備に取り組む青年の姿が描かれるようです。霊的で美しく静かな迫力に満ちた作品を予想します。期待大です。
『The Gentle Indifference Of The World』(カザフスタン/アディルカン・イェルザノフ) カザフスタンのアディルカン・イェルザノフ監督新作です。実は、昨年ブリスベンで開催された映画賞「Asian Pacific Screen Award」の審査員を一緒に務める機会があり、イェルザノフ監督とはすっかり友達になってしまったので冷静に紹介するのが難しいのです。ともかくカンヌ決まってよかった!
新作『The Gentle Indifference Of The World』は、父の死が残した借金を返すべく、田舎から都会への生活を余儀なくされる女性と、彼女を慕って手助けしようと行動を共にする青年が、都会の欺瞞に振り回されながら生きて行く様を描くドラマであるとのこと。「世界の優しい無関心」というタイトルが何とも言えず良いですね。染みてきます。