「アクシオ!(来い)」エディ・レッドメイン演じるニュート・スキャマンダーが、イタズラ好きな魔法動物ニフラーに向かって放った “呼び寄せ”呪文。このニフラーは、宝石やコインのようなキラキラしたものが大好き。魔法のトランクから逃げ出したニフラーをようやくつかまえるべく、ニュートが呪文をかけたのだが、もふもふのおなかから次々飛び出す“宝物”とともに、くるりと回転しながら呼び寄せられていくニフラーの超絶的なかわいらしさには、悶絶する人が続出。このシーンは、『ハリー・ポッター』シリーズと同じ世界を舞台に新しい主人公と魔法動物たちが活躍する『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』を象徴する、印象的なシーンの1つとなっている。約5年ぶりの完全新作にして、新シリーズの始まりとなる本作。映画はお馴染みの「ヘドウィグのテーマ」から幕を開けるが、冒頭から、『ハリポタ』シリーズにもたびたび登場した“日刊予言者新聞”の“アメリカ版”の紙面が続き、一気に魔法の世界へと誘われる。「あれは、実は最後のほうに考えて付け足した部分だったんだ。最初からアイデアがあったわけでもないし、脚本にも書かれていなかったんだ」と、『ハリポタ』シリーズ後半4作、そして本作を手がけたデイビッド・イェーツ監督は語る。「後から追加したのは、あのシーンがあることで、一瞬にして世界観とその文脈が伝わると思ったからなんだ。自分たちがいまいる現実世界から、この映画の世界への入口になるし、映画の世界の空気感を一瞬にして感じることができると思った。あれを観た瞬間に、“さあ、この映画の世界を楽しもう”という気持ちになれると思うんだよね」。その“日刊予言者新聞”には、アメリカ魔法界の最近の出来事や、『ハリポタ』での最大の敵ヴォルデモートとはまた違う“闇の魔法”の暗躍が、ページをめくるように次々と示されていく。「嬉しかったのは、実際、(テスト試写で)あのシーンを気に入ってくれた観客がすごく多かったということ」と、イェーツ監督は続ける。「あのシーンで物語の序章のようなものを見せることで、この世界の文脈が理解できて、より物語を理解してくれる人が増えたんだよね。だから、あれを見せることで映画の本題にじっくりと入っていける、そういう大事な役割を果たしていたんだ」。そんな監督の言葉を受け、これまでの『ハリポタ』全作をプロデュースしてきたデイビッド・ヘイマンも、「あれがなかったときは、映画がどこか落ち着きのない、ふわふわしたものになっていたんだよね」とふり返って語る。加えて監督も、「あの壮大なオープニングがなかったら、何かすごく穏やかで、気まぐれな感じになっていたんだよね。(作品が持つ)空気感そのものを変えてしまったんだよ」と語り、その決断に自信を覗かせる。新しいシリーズを牽引する主人公の魔法動物学者ニュートを演じるエディは、そんなイエーツ監督について、超大作であるにも関わらず「まるで“インディ映画”を作るような親密さがあったところが好きだ」と語っていた。「それは僕の中でも大事な哲学なんだ。ハリウッド映画は巨大で、どれも同じように思えてしまうことがあるかもしれない。だけど、インディ映画のようなパーソナリティがあれば、それぞれが自分たちが何ができるのかを考えられるし、自分の力をどう発揮すればいいのか分かる。そうやって、みんなの力が結集してこそ、1つの大きな素晴らしい映画ができると思っているからね。だから、僕にとって、みんながそう思える環境を作るのはすごく大事なんだ」。一方、ヘイマンは「デイビッド(・イェーツ)が撮影現場で作り上げる空間は、巨大なセットがあっても、特殊効果があっても、究極的には非常に人間的なものなんだよね」と、監督の手腕に言及する。「この物語には魔法も出てくるし、ファンタジーではあるけど、でも、究極的には人間について描いたものなんだ」と、シリーズの神髄にも触れた。しかも、今回の『ファンタビ』は、『ハリポタ』シリーズの原作者J.K.ローリング自らが、映画のために脚本を書き下ろしている。「彼女と仕事できて本当に感動的だったよ」と監督は言う。「彼女には恐れのない想像力があるんだ。だから、それをいかにコントロールするのかも大事だった。彼女の想像力を最大限に活かしながら、僕らのアイデアも取り入れてもらい、アイデアを固めていくことが大事だったんだ」。