――その時代とともにモテる男の条件は変化するものだ。少し前までは、平成の新条件として肉食系男子、草食系男子、塩系男子、細マッチョ、イケメンなんていうカテゴリーも追加されたけれど、ここ数年は漫画家が描くキャラクターをまとめた“○○男子”が出現している。それは、いくえみ綾が描く“いくえみ男子”。歴代の“いくえみ男子”たちがこれまでに残してきた胸キュンのセリフを集めた公式ファンブック「いくえみ男子 ときどき女子 Bitter Sweet Voices いくえみ綾 名言集」なんていうものまで出ているのだから、ある特定のタイトルだけでなく、1979年のデビュー当初の作品から現在に至るまで、いくえみ綾が描き出す男子に共通する何かがあるのだろう。そこに私たち女子はたまらなく惹かれるのだろう。数多くのタイトルの中でもとりわけ人気があるのは、いくえみ綾の名前を世に知らしめた「POPS」や、小学館漫画賞を受賞した「バラ色の明日」、講談社漫画賞少女部門を受賞し、映画にもなった「潔く柔く」。この3作は圧倒的人気を誇っている。そこには現代の女性たちが求めている理想の男性像があり──それは単にカッコいいだけじゃなく、見た目はゆるくて、どこか隙があって、いざというときは男らしく引っぱってくれて、しかも少年のような無邪気さも持ち合わせていて…というように言葉だけ羅列すると身近にいそうじゃない? って思うのだけれど、なかなか“いくえみ男子”に当てはまる人がいないのが現実。ひと昔前の“三高(高学歴、高収入、高身長)”よりも見つけるのは難しい。ある意味、究極のモテ男だ。だからこそ漫画の世界のキャラクターに恋してしまうのだろうけれど…。漫画の世界で生きる“いくえみ男子”を生身の人間で見ることができたら、“いくえみ男子”の心をぐらつかせる名セリフの数々を生声で聞くことができたらどんなに胸キュンものだろう…という願いを叶えてくれたのが映画『潔く柔く』。岡田将生、高良健吾、中村蒼といった、まさに“いくえみ男子”と言える俳優たちが、なりきって囁くのだから、ときめかないわけがない! ハルタがカンナへの想いを言葉にするシーンとか、赤沢禄がカンナを抱きしめるシーンとか、人を好きになったときのあの何とも表現しがたい感情を理想の男性を通して感じることができるなんて、もう贅沢すぎ!『潔く柔く』は大切な人を失った悲しみとの向き合い方、新しい恋への踏み出し方という深いテーマもあるけれど、人を好きになるってこんなにステキなことなんだと、女性の心をキラキラさせてくれる魔法の物語でもある。映画の中に広がるそのキラキラ感、体験しないなんてもったいない!『潔く柔く きよくやわく』ブルーレイ&DVDは5月21日(水)リリース。