日本アカデミー賞「最優秀作品賞」に輝いた『舟を編む』の石井裕也監督の新作『ぼくたちの家族』の完成披露試写会が4月22日(火)に開催。石井監督を始め、妻夫木聡、原田美枝子、池松壮亮、長塚京三、黒川芽以、原作者の早見和真が上映前の舞台挨拶に登壇した。映画化もされた「ひゃくはち」などで知られる作家の早見さんが、自身の家族との体験を基に執筆した小説を映画化。母が脳腫瘍で「余命一週間」と宣告されたことで、浮き彫りになる、ずっと前から壊れていた家族の姿――それでも事態を少しでも良い方向に打開しようともがく息子たち、夫の姿を通じて家族の肖像を描き出す。真面目で家族が抱える問題を一身に受け止めようとする長男を演じた、妻夫木さんは「思いをいっぱい込めて作った映画です」と語る。一方で「家族に『答え』はないし、(映画について)なんて言っていいのか正直、分からないし簡単じゃない。それぞれに家族の形があり、抱えているものがあると思います、この作品を通じてみなさんの家族の形を探していただければ」と真摯に呼びかける。石井監督は、初タッグとなる妻夫木さんについて「30代になって特に、悩んで、うつむいて考え込む物憂げな表情がカッコいいと思っていた」と悩める長男役のオファーの理由を説明。妻夫木さんはこの言葉に「悩んでたのかな…?」と苦笑しつつも、「30代は悩みながら進んでいこうと思っていたので、それでオファーをいただけて良かったです」と笑顔を見せた。池松さんは斜に構えた次男を演じたが、妻夫木さんとの兄弟役での共演に「嬉しかったです」とニッコリ。「10年くらい前、僕は妻夫木さんに似ていると言われていたんです…いまはこんな風になっちゃいましたが(苦笑)。だから勝手にシンパシーを感じてました。やっぱり監督の言葉を借りるなら、悩んでる姿がカッコよかったです!」と“兄”への憧憬を口にする。黒川さんは妻夫木さんの妊娠中の妻を演じているが、時に夫に対し、義父母について厳しい言葉を口にすることも。「世の奥さま方は大変ですよね。そんなみなさんの代表として言わせてもらいました」と語るが、妻夫木さんは「鬼嫁にビシビシ言われました。結婚は当分いいかなと思った」と語り笑いを誘っていた。長塚さんと原田さんは過去に幾度も夫婦を演じてきたが、長塚さんは「今回が一番よかった!」と胸を張る。原田さんは妻夫木さんと池松さんという世の母親が羨ましがりそうな息子たちについて「カッコよかったです」と微笑んだ。原作者の早見さんは、原作のモデルとなった母親が昨年9月に亡くなったことに触れ「大往生でいい最期でした。田舎の小さな葬儀場だったんですが、ここにいるみなさんが花を送ってくださりまして」とキャスト陣と監督の心遣いに深く感謝。また妻夫木さんの姿に自分自身を重ねる部分もあったようで「妻夫木さんは僕が背負ったものを背負ってくれました」とその迫真の演技に対しても感謝の思いと称賛を口にしていた。最後にマイクを握った石井監督は「どう言っていいのか分からない映画」と言いつつも、「すごい映画を作った自負はある」「わけ分からないものに真摯に向き合った達成感はあります」と自分の中の手応えを明かした。『ぼくたちの家族』は5月24日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。