『EDEN』武正晴監督の新作、『モンゴル野球青春期』。26歳でモンゴルに渡り、野球を、そして“ベースボール”という言葉を広めた関根淳さんの実話がベースになっています。国も言葉も文化も違う人たちが、野球を通して繋がって行くさまを映画を通して観て、繋がる私たち。映画の力を信じる人の、作った映画でした。嬉しかった。劇中こんな台詞が。「スポーツには不思議な力があるのよ。みんなが、ひとつになれるの。」私にとって出て来る台詞々々の"野球"や"スポーツ"という単語が“映画”に置き換えられる気がして。一つの国にも色んな人がいますから、「~の国の人」って括るのはあまり好きじゃないですがこの映画に写るモンゴルの人たちは愛嬌があって、何とも愛らしい。私自身、合作映画の現場には何度か参加したことがあって良くも悪くも意思疎通に、通常の2~3倍時間がかかってしまうのです。でもこの作品は、何かが上手く行っていた。きっとその愛嬌が、現場を和ませていたんじゃないかなあ。なんて想像して。上映後、K's cinemaで続けてNicholas Rayの“We can't back home again”(この組み合わせ、凄くないですか。)を観た後武監督と再び合流して焼き鳥屋さんへ。撮影のあんなこんな裏話を聞く。面白かったあ。やっぱり苦労はつきもの。首締められて怒鳴って現場を諦めて鼓舞して。逆境をいかに好転させるか。いい画撮れてるんですよ、本当に。タイトルクレジットの画なんて圧巻です。良い映画は、小さな奇跡の積み重ね。話が弾んで“単館上映だから出来ること”という話題に。たとえばその日のお客さんの人数によって音響のデジベルを調節する。天候によって スクリーンの明るさを調節する。これを毎日自らやってる監督 素敵じゃないですか。私が知らないだけかもしれないけど、初めて聞きました。大阪の劇場に「上映の際はスクリーンの位置をあげてくれ」と手紙を送ったデイヴィット・フィンチャーみたいです。映画は寂しさを埋めてくれるんですね。スクリーン越しに土の匂いを嗅いで、モンゴルの青空を眺めているうちに心が伸び伸びしてくのを感じる。野球映画で、泣くと思わなかったなあ。作品を通して関わったことのないモンゴルの人、まるで興味のなかった野球を…。いや、野球をする人たちまで好きになってしまう、映画の魔法にかかりました。映画が、野球が、人の情が共通言語になる瞬間。でもね。ほんわかだけじゃないんです。やっと心が通じた…! と思った矢先 些細な誤解で、開いたと思った心の扉がバタバタと音を立てて閉じられてしまう、異国での孤独感。そういうのもちゃんと写ってます。あのシーンは、何かを思い出して痛かった。綺麗なものばかりじゃない、良いことばかりじゃない。映画はまるで人生です。K's Cinemaで7月13日(土)までの上映です。12:45から。平日には観にくい時間帯かもしれませんがスクリーンで観てもらいたいな。この週末に、映画館行きませんか。玄里玄里OFFICIAL facebook