薦められたときどうして、タイトルが親密さなんだろうと思う。なんだかぎこちない響き。観終わってああ。愛と呼ぶには生温い、関係性。それが親密さ。恋でもない、寂しくて駅のホームで肩を寄せ合う人間の、親密さ。前半の2時間は劇団員たちの話。後半の2時間と少しは 舞台の本番がまるまる流れる。言葉が好きな人が好きな映画、と思う。自分の頭の中身をぶちまけたような台詞たちに出会えたのは単なる私のラッキーなのか、それとも本質的なことを掴もうとしてる映画だからみんなが共感できるのか、は定かでないけど。一緒に観た友達に聞けば良かった。観終わった後言葉が出て来なくてさよならしちゃった。一緒にいたいから変わって欲しいって気持ちとそのままでいてほしいって気持ち。相反しているように見えてこの2つはそんなに離れてない。むしろ同じ、らしい。どこかの国で起きている戦争といまここでお前が向き合わなきゃいけないこと、どっちが大事なんだ。おれは俺の大事にしてるものを大事にしたいだけだよ。誰もきっと間違ってない。これも、同じこと。濱口さんは、人とちゃんと向き合って成長した人なんだろな、と思う。気持ちの童貞映画(これは、事務所の先輩の近藤芳正さんが名付けて、気に入ってる)が多いこの世代に。熟齢と若さの両方を感じさせる不思議な魅力の作品。自分はこれを撮るんだという揺るぎない信念。繋がっている、全部が。繋がりたい、全部と。でも親密さを生むのはきっと「気をつけてね、距離感」恋と呼ぶには生温く愛と呼ぶにはとても遠くて優し過ぎるから残酷な、親密さ。『親密さ』(2012年)----------------------------------------------------------監督・脚本:濱口竜介5月25日(土)から6月7日(金)まで、ポレポレ東中野にて上映中。