『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』観賞。『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス監督は夫婦から父子へとテーマを移し、重厚なドラマを作り上げた。一貫して描かれる普遍的な家族の姿は、生々しく、切ない。暴力的で気性が荒く、息子のために銀行強盗を繰り返すどうしようもない男。バイクの腕前だけは天才的、そんな父親。不器用すぎる優しさが悲劇を生む。自身も偉大な父を持ち、出世エリートコースを進む新米刑事。真面目で誠実だが、自分の犯した罪を隠し、その罪を背負いながら生きる男。外からは立派に見える父親も、ドラッグに手を出し荒れる息子を持つ。血の繋がった子ではないが、愛する女性の子供を自分の息子として育ててきた心優しい男。育ての親こそが実の父親より大切な存在だったり、逆に、やはり本当の父親には勝てない切なさもある。これは父親たちの物語。子は親を選べず、親から子へすべて受け継がれていく。主人公が入れ替わる3部構成が効果的。さまざまな父親とその息子たちのエピソードが連なり、時に交わる。終盤やや語りすぎな点だけが少し残念。監督の繊細な演出に加えて、役者の力が映画を底上げる。ライアン・ゴズリングは『ドライヴ』そのままに危うく魅力的。ブラッドリー・クーパーの抑えた演技は、彼のフィルモグラフィで1番かも。ゴズリングの息子を演じた新星デイン・デハーンの瑞々しさ。そして、レイ・リオッタのハンパない存在感に震えた。父を想う。最近、自分自身も父親になった。心を揺さぶる映画は、記憶に触れてくる。『君と歩く世界』と『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』。余談だが、今年の上半期を代表するこの2作品のエンドロール曲がカブったのは少し惜しい気も。