『ザ・マスター』観賞。男と男の異様な絆。どうしてここまでお互いを必要とするのだろうか?この二人の心情が正直よく分からず、感情移入しにくい映画ではある。ただ、人と人が惹かれ合う理由なんて上手く説明できないもの。監督自身も言っているが、これはフレディとマスターのラブストーリーとも観れる。信仰がテーマでもある。実在する宗教団体がモデルなので、やや特殊で難解な世界かと構えてしまうが、浮かび上がってくるのは、シンプルな人間の姿。男の弱さ、そして男を支える女の強さ。ホフマン演じるマスターが1番人間臭く見えた。演説前には緊張するし、発表した本について指摘されたときの動揺ぶり。フレディに影響を受けてしまっていること、フレディとの蜜月の関係を他者に触れられたくないのだろう(まさに恋愛)。奥さんに裏でがっつり支えられている点にも親近感。そして、圧倒的な映像の力を堪能した。冒頭、真っ青な海をとらえた俯瞰のショット、この最初のワンカットでもう心酔。対話する二人の顔も印象的。不穏な映像美から溢れ出る不安定な感情。監督の凄み、役者の凄み。感じる映画。