世界中の有名パティシエが来日するバレンタインシーズン。ブラッド・ピットや二コール・キッドマン、ハリソン・フォードなど多くのハリウッド・セレブを顧客に持つL.A.発のチョコレートブランド「コンパーテス ショコラティエ」が、伊勢丹新宿のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」に2年連続で出店を果たした。イベント開催期間中、若きオーナー兼ショコラティエ、ジョナサン・グラムが来日。多忙なスケジュールの合間に、快くシネマカフェのインタビューに応じてくれた。シックなグレーのデザインシャツにネイビーのゆったりとしたカーディガン、スリムジーンズをオシャレに着こなした彼は、一見パティシエには見えないスマートな風貌の持ち主で、しかも現在28歳という若さ! 終始フレンドリーな笑顔を浮かべながら、チョコレートを通して表現したい想いや夢、そして「コンパーテス ショコラティエ」の今後の展望などを語ってくれた。ビバリーヒルズで生まれ育ったジョナサンは、2003年に19歳の若さで当時創業50年の老舗高級チョコレートブランド「コンパーテス ショコラティエ」のオーナーに就任した。その後、ファッショナブルなデザインや若い感性によるユニークな発想を取り入れた商品を次々に生み出し、ブランドイメージの刷新に成功。“チョコレートボーイ”という愛称を持ち、2011年のアメリカ版「フォーブス」で「有望な30歳以下Food&Wine TOP30」に選ばれるなど、チョコレート界を牽引する革命児として世界中から注目されている。そんなジョナサンの新しいことへ挑戦する原動力はどこにあるのだろうか。「アメリカのお菓子と言えば、大きくて、とにかく甘い! みたいなジャンクなイメージがあるかと思うのですが、私はそのイメージを自分のチョコレートで変えていきたいと思っています。ショコラ業界全体を見渡しても、老舗になればなるほど伝統や格式ばかりを重んじてしまいがちになると思っているのですが、僕はもっと自由でチャレンジングでありたいと思っています。常にユニークでファッショナブル、アーティスティックで、人々のライフスタイルにマッチするトレンディなチョコレートをL.A.から発信していきたいですね」。その言葉どおり、エキゾチックな味わいが特徴のスカルデザインのトリュフは、L.A.セレブ御用達の“イット”なアイテムとして瞬く間に話題になった。ほかにも、丁寧にローストしたナッツをキャラメルコーディングしてチョコレートをかけた「ラブナッツ」は、シャンパンとの相性抜群で、あのハリソン・フォードが映画の撮影中にバケツ一杯分食べたと言われる逸話も。次々とヒット商品を生み出すジョナサンがチョコレート作りで大切にしていることはどんなことだろうか。「コンパーテスのチョコレートのコンセプトは“スイート & ソルティ”です。甘さと塩味の絶妙なバランスの中で、マンゴーやパッションフルーツ、ハニー、アプリコットシナモン、キャラメルなどバラエティ豊富な素材を組み合わせて、食感や味わいの奥行きを生み出す工夫をしています。チョコレート作りでもうひとつ重要なのが、ファッション性です。スカルのデザインは僕がぜひやってみたいと考えたデザインなのですが、若い人を中心に人気商品になりました」。ジョナサンのクリエイトするチョコレートは、美味しくてお洒落。アメリカのセレブ情報誌などではL.A.のお洒落なスイートショップとして紹介されるなど、ライフスタイルにマッチしたブランドとして認知されているのだ。そんなアイデアのセンス抜群のジョナサン。頭のなかはいつも新しいチョコレートを生み出すことでいっぱいなんだとか。「よく夢の中で新しいチョコレートのアイディアを思いつくので、目覚めてからすぐにレシピを書き込めるように、枕元にはいつも秘密のレシピノートが置いてあるんです(笑)。僕はビーチが好きだから、パッションフルーツなどトロピカルなフルーツとチョコレートの組み合わせをよく使うんですが、世界各国へ訪れては、その土地の食材や調味料、スパイスを探し歩くのが趣味なんです。世界を旅する中での経験がインスピレーションの源になっています」。何度か日本を訪れている彼だが、日本の七味や柚子、抹茶、わさび、ゴマといった素材に興味を持ったとのこと。今後、取り組んでみたいことについてたずねると、「コンパーテスでは最近さまざまなファッションブランドとのコラボレーションを実現していますが、今後も自分が好きなファッションブランドとのコラボレーションをどんどんやっていきたいと考えています」と明かした。直近では、「DIESEL」や「シー・バイ・クロエ」ともコラボを果たしているが、それについては、「とてもエキサイティングな仕事でした! コンパーテスをコラボレーションの相手に選んでいただけたことを大変光栄に思っています」と目を輝かせながら語ってくれた。ところで、なぜジョナサンはチョコレートアーティストになりたいと思ったのだろうか。「僕は、チョコレートの中に、生まれ育ったロスの街を表現していきたいと思っているんです。ロスには僕の大好きなビーチや、アート、ミュージック、カルチャー、ファッション、グルメ、そしてそこに暮らす人々のライフスタイルがあり、そのすべてをチョコレートで表現できたら素敵だなって思うんです。15歳のときにチョコレートアーティストになろうと決心し、今28歳ですけれど、人生の半分はチョコレートのことばかり考えて生きてきたんですよね(笑)。新しいアイディア、どんなことをしたら面白いか。無限の可能性を持つキャンバス、それが僕にとってのチョコレートです。そこにアーティストとして、また今は経営者として、想いや夢を描いていきたいと思っています」。ジョナサンが思い描く夢とは、一体どんなものなのだろうか。10年後のブランドと自身のイメージを聞いてみた。「実は、僕はコンパーテスをこれからライフスタイルブランドとして育てていきたいと考えているのです。僕の生まれたL.A.やビバリーヒルズのライフスタイルを体現するようなラインナップを揃えた、チョコレート発のライフスタイルブランドがあっても面白いなと。だから、いずれはチョコレートだけでなく、洋服や雑貨、日用品などのデザインやクリエイションも手掛けていけたらいいなと思っているのです」。チョコレートブランドとしてだけでなく、ライフスタイルブランドとしての取り組みにも意欲的な彼だが、10年後にはリタイアすると周囲に宣言しているのだそう。「40歳になったら、ハワイのカウアイ島の大好きなビーチ沿いに家を建て、そこにカカオの木を植えて、毎日チョコレートを作りながら、愛犬たちとのんびり過ごしたいんだ。それを目標にしています。だから今はどんなことにも全力疾走できるんです」。インタビューを終えて。有名ブランドとのコラボやハリウッド・スターなどのビッグネームからのオーダーを受けて、プレッシャーを感じたり、苦労したことなどはないかとたずねたとき、「どんな注文も自分にとってのチャレンジ。著名人やスターからオーダーをいただけることもとても光栄なことだと思っています」と、ストレートで真摯な姿勢を感じさせたジョナサンのまなざしが印象に残っていた。「クリスマスは一番忙しくて、ひとり100箱からのオーダーが来たときなんかは、一体どうやって作ったらいいんだ! ってさすがに戸惑ってしまうこともあるんですけど」と笑いながらも、ポジティブにそれを受け止めているのだと話した。チョコレートアーティストと経営者、二足のわらじを履きこなしつつ、目標と夢に向かってポジティブに突き進む 彼のハートの強さを感じさせてくれた。10年後、20年後と、トレンド・セッターとして走り続けるジョナサン・グラムは、チョコレートから始まるどんな世界を私たちに見せてくれるのだろう。想像するだけでも今からとても楽しみになった。