『みなさん、さようなら』鑑賞。自分の生まれ育った街にも、団地はたくさんあった。平和と閉塞感が共存した集合住宅地は、しだいに姿を変え、時代とともに変化していく。すばらしいロケーションのおかげで、当時の記憶もよみがえる。団地から外に一歩も出ないで生きると決めた主人公、悟。団地の中だけで生活し、団地で就職し、団地をパトロールし、団地の中で恋をして。。そして、この団地は自分が守るとトレーニングを欠かさない毎日。。。前半は、この無垢すぎる少年のようなキャラクターの暮らしぶりを、ある種ファンタジーとして観ていた。ほのぼのとユーモラスに、こんな人間が1人くらいいてもおかしくはないかなと。しかし、この映画は、ゆるやかに姿を変えていく。悟が団地で生きる理由が明らかになりつつ、これまで観てきた20年間の団地内人生の情報が上書きされ、観客の感情は再構築される。コミカルな喜劇から、ぐっとくる人間ドラマへ、映画は大きく変貌を遂げるのだ。『フォレスト・ガンプ』を少し思い出した。世界中を走り回ったガンプとは違い、こちらはおもいっきりミニマムな世界(団地)だけど。さて何回、“団地”と書けばいいのやら。