『東京家族』鑑賞。やさしい映画だ。誰もが家族の誰かを思い出すだろう。父と母、兄弟、嫁と夫、みんな本当に身近にいそうな登場人物たち。橋爪功と吉行和子がすばらしかった。頑固な父親の丸まった背中と優しい母親の愛くるしさ。この両親ふたりが田舎から東京に出てくるところから映画は始まる。長男の家に子どもたちが集まり、久々に一同が揃う。兄弟3人それぞれの親に対する接し方の違いや、孫の祖父母に対するぎこちなさ、決して広くはない部屋の様子など“ある家族”の暮らしぶりがすぐに伝わってくる。前半の積み重ねた空虚な日常が、後半の身に染みる感動を呼ぶ。やや堅い台詞や優等生すぎる描写もあるが、ただこれも監督らしさだろう。特に妻夫木聡演じる次男に感情移入した。面と向かって上手く話せない、父親との距離感。母親への安心感。実家を出て、東京で生きること。堅物の父親が長い沈黙のあとに、次男の恋人に伝えたこと。本人には直接言えない父の優しさが、じんわりと胸いっぱいにさせてくれた。