映画祭も終盤。日本映画が一歩リードしていたコンペに強力なライバルが現れた。3日に上映された、ジョナサン・デミ監督、アン・ハサウェイ主演の家族ドラマ『レイチェル・ゲッティング・マリッド』(原題)が、高評価を獲得。さらに、4日に上映されたキャスリン・ビグロー監督による、イラク戦争を題材とした『ハート・ロッカー(原題)』が、映画誌CIAKの批評家10人による星取表で平均3.65点となり、トップに躍り出た。これまでは宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』が5点満点中、3.5点で長く1位をキープしていたのだが、ビグローの描く戦場の生々しい描写が、批評家の心をつかんだようだ。また、女優並みの美貌で知られるビグロー監督は、5日にはイタリアを代表するアイウェア・ブランド、ペルソールから、スタイル・アワードを贈られ、グランプリに向けて弾みをつけた。しかし一方で、4日夜に行われた『ハート・ロッカー』のレッドカーペット近くでは、イタリアでの米軍基地拡張に抗議するデモがあり、「ものを投げつけられそうで怖かった」(現地カメラマン)というほど、ものものしい雰囲気に包まれてもいた。(text/photo:Ayako Iahizu)