高名な黒人解放運動指導者であり、南アフリカ共和国初の黒人大統領となったネルソン・マンデラ。本作では彼がノーベル平和賞を受賞し、大統領に就任する以前、反政府運動を牽引するテロリストと見なされ、刑務所に囚われていた27年間にスポットが当てられている。とは言え、物語はマンデラの視点で進むのではなく、刑務所の看守として彼と心を通わせた白人男性、ジェームズ・グレゴリーの側から描かれる。マンデラの故郷の言葉であるコーサ語を話せることから、国家公安局に秘密のスパイ任務を命じられたグレゴリー。黒人差別に何の疑問も抱いていなかった彼がマンデラの人柄や国の現実に触れ、徐々に目を開こうとするさまがひとりの男の成長ドラマとして真摯に見つめられていく。マンデラ役のデニス・ヘイスバートは「24」のパーマー大統領や「ザ・ユニット 米軍極秘部隊」のジョナス・ブレイン特殊部隊隊長の好演もあっていまや賢人のイメージが強く、実直な看守に多大な影響を与えていく役どころを難なく演じている。コーサ語のマスターに余念がなかったというジョセフ・ファインズも、社会の歪みに翻弄されるグレゴリーを熱演して久々に本領発揮。グレゴリーがマンデラに魅了されたように、素直に感動できる社会派ドラマとなっている。