「あのときのわたしには、自分よりも大切なひとがいた。それが、永遠に続くものだと信じていた」。四月。精神科医の藤代俊のもとに、かつての恋人・伊予田春から手紙が届く。“天空の鏡”と呼ばれるウユニ塩湖からの手紙には、十年前の初恋の記憶が書かれていた。ウユニ、プラハ、アイスランド。その後も世界各地から届く、春の手紙。時を同じくして藤代は、婚約者の坂本弥生と結婚の準備を進めていた。けれども弥生は突然、姿を消した。「愛を終わらせない方法、それは何でしょう」その謎掛けだけを残して――。春はなぜ手紙を書いてきたのか? 弥生はどこへ消えたのか? ふたつの謎はやがて繋がっていく。「あれほど永遠だと思っていた愛や恋も、なぜ、やがては消えていってしまうのだろう」。現在と過去、日本と海外が交錯しながら、愛する人の真実の姿を探し求める“四月”が始まる――。
山田智和