年齢という括りで“成長”という流れを作る
――先ほど伺った「被写体が制作に参加する」体制含めて、一般的なドキュメンタリーに対するカウンター的な作品でもありますね。各々の背景を説明しない、というのも新鮮でしたし、音楽やナレーションを排している点も興味深かったです。
竹林:まず、様々な人に影響を及ぼしてしまうため全てをオープンにはできないという制約がありました。そのうえで、被写体の子どもたちが「この映画に出てよかったな」と思えるものがいいという前提の思考の整え方を行っていきました。
大抵のドキュメンタリーは課題を提示する役目を担っているかと思いますが、その観点でいうと「背景を説明しよう」となっていたかと思います。ですが「こういう子です」と見せてしまうことでわかった気になって整理してしまうのも危険ですし、本作ではそれを行いませんでした。
背景に想像を巡らせながら「自分に近いところがあるのかもしれない」などと考えながら観ていくと、一つひとつの言葉に耳を澄ませることになり、子どもたちに向き合うことができると信じて。ただ、ドキュメンタリーとしてそれを行うことは非常にチャレンジングでした。どう成り立つのかわからない怖さがあったのは確かです。
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そんななかで、「こういう性格だからこの順番に並べるんだ」ではなく、普遍的な年齢という括りで“成長”という流れを作ることにしました。個人に限定しない共感の仕方を生み出したいという想いから、そうした整理を行った形です。
齊藤:その構成については、僕は仕上げの段階で知りました。子どもたちが全員僕のことをメディアを通して知っているわけではありませんでしたが、とはいえ自分の存在がノイズになりかねないので、極力内に入らないようには気を付けていたつもりです。
僕の担当としては、作品の中身というよりも、長い間カメラが子どもたちや職員の方々の生活に入ることに対して安心してもらえるような役割であり、そのために接点を設けていました。自分が現場にいかに立ち会わないかが大切だと感じて、作品の完成を楽しみに待っていました。
そのなかで、子どもたちの何人かが、福田文香プロデューサーをはじめスタッフの方々の働く姿を見て映像業界に興味を持ってくれたことが記憶に残りました。「映像業界で生涯働いていく」というところにたどり着かなくても、職業を知ってもらい、働く大人――しかも心を許せる人たちとかれらが出会えたことはひとつのゴールになった気がします。被写体になってもらい、撮影する仕事を近くに感じてもらったことが、貴重な体験になったのかもしれないと思えた出来事でした。
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▼齊藤工
スタイリスト:Yohei "yoppy" Yoshida
ヘアメイク:赤塚修二
衣装クレジット
セットアップ・スニーカー:Y’s for men/ワイズフォーメン
シャツ:Yohji Yamamoto/ヨウジヤマモト