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【TIFFティーンズ映画教室】中学生が映画制作に挑戦 西川美和は「将来、現場で一緒になるかも」と期待

夏休みに中学生18人が映画づくりに挑戦!特別講師の西川美和監督は子どもたちとの交流を通して何を感じたのか。東京国際映画祭が開催する「TIFFティーンズ映画教室2024」の様子をレポートする。

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TIFFティーンズ映画教室2024
Photo by:marinda TIFFティーンズ映画教室2024
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「映画の未来を開拓」を重要なミッションに掲げた東京国際映画祭が開催する「TIFFティーンズ映画教室2024」が、この夏休みに開かれた。

この企画は、東京国際映画祭が全国で子どもたちに向けた映画制作ワークショップを実施してきた一般社団法人こども映画教室とともに、毎年開催しており今年で8年目を迎える。中学生を対象に約8日間で子どもたちだけの力で短編映画を制作、完成した作品は11月3日(日)に東京国際映画祭で上映される。

今年は、特別講師として『すばらしき世界』などで、国内外で高い評価を得る西川美和監督が参加。子どもへの映画指導は初めてという西川氏は何を感じただろうか。

子どもたちの自主性を重んじる実践形式

映画教室の参加者は、応募の中から選ばれた18人。将来、映画の道に進みたいと考えている子もいれば、夏休みの思い出にと応募して来た子もいるなど、動機は様々だ。

実習は、18名の子どもたちを3つの班に分けて行う。今回のテーマは、「人の話を聞いて物語を作る」。グループ内で子どもたち同士でインタビューを行い、エピソードを作り、どんなストーリーの映画を作るのかを決めていく。実戦形式中心のワークショップだが、座学もあり、西川監督の『すばらしき世界』などを題材に、どのようにシーンを構成するのかなどを学んでいく。

実制作は、指導役の大人たちが各班に付くが、基本は全て子どもたち自身で行われる。撮影、録音だけでなく演技をするのも子どもたち自身だ。物語作りから撮影、編集まで全て子どもたちの自主性に任せられ、大人たちは、スケジュールに間に合いそうにないなどの特段の事情を除いてなるべく干渉しないようにしているそうだ。

監督や撮影など、役割分担は決めずに6人全員で全てを決めていく。みなで意見を出し合い、議論して決めていく制作スタイルは、効率よりも子どもたちの自主性を重んじるためのようだ。

撮影中はみな真剣なまなざしで演出を検討していた。様々なカメラアングルを試し、役者の動きを確認していく。この日は、卓球ラケットを持った少年がドアを蹴とばして入ってくるシーンを撮影していて、卓球の玉が飛んでいく方向が理想通りになかなかいかず、何度もこだわって再撮影を繰り返していた。

また、別のチームは撮影した素材を編集してつないだものを確認する作業を行っていた。編集時も、大人たちは感想を伝える、最終決定は子どもたちがくだす。編集ソフトの使い方をレクチャーしながら、つないだ映像を見ながら、再撮影すべきところを言い合い、ブラッシュアップに励んでいた。

また、もう一つの班は、野外でのロケ撮影に挑んでいた。多摩川駅近くの緑あふれる公園でのロケ中は、線路が近いために電車の音待ちの多い現場で、室内撮影とは勝手が違うが、そうした基本を理解しながら撮影を進めていた。また、迫力ある効果音を録るために落葉を集めて踏みしめるなど、現場にあるもので工夫を繰り返していた。

将来の映画人を育てるだけではない貴重な体験

特別講師の西川監督は、子どもたちに映画制作を指導することを通じて、改めて「映画作りはこういうことだった」と再発見したという。

「プロの現場は、やり方を分かった人たちが集まって暗黙の了解のもとで作られますが、子どもたちはゼロベースから始まるので、まとまらないことも多い。プロの現場組織がいかに効率よく出来ているのかと改めて思いました。なるべく口出ししない方針でやっているので、こちらはやり方を知っていたとしても我慢しながら見ているんです。その中で、子どもたち自身が解決法を見つけ、プロと同じ方法にたどり着くこともあって、子どもたちの発見する力に驚かされます。実際、私の作り方だけが正解じゃない、自分のやり方を教えることで幅を狭めてしまうかもしれない、指導側の大人も試される場ですね」

中学生を対象としているこのワークショップは、専門スタッフ育成の場ではなく、より広範な感性やコミュニケーションの大切さを学ぶ場として機能しているようだ。西川監督は、映画制作を通じた教育効果についてこう語る。

「私は教育について語れる立場ではないですが、映画は一人では作れないものだというのが最大の特徴です。ですから、みんながそれぞれの役割を担って、垣根なくコミュニケーションすることが必要です。男女関係なく年齢の違いも取っ払って、日常的な学校の授業とかカリキュラムの中では感じないような一体感は感じているかなと思うんです。その中で、お互いの個性があってそれをつなげていくことで映画を作り上げていく。映画作りというものは、映画人を育てるだけではない貴重な体験になるかもしれないと改めて思いました」

座学では、西川監督の代表作『すばらしき世界』も見せたようで、子どもたちはそれぞれの作品の感想を監督に送ったという。中には、非常に鋭い批評もあったそうだ。

「私が全く考えもしなかったことを指摘している子もいます。最後に主人公が嵐の夜に持病で死ぬけれど、『あの嵐は荒れ狂う主人公の心の中のようで、最後に手にするコスモスは“宇宙”だ』みたいな感想も。今度作品について聞かれたら、こう答えようかなと思うくらいです。面白いのは、暴力シーンがリアルに見えて怖いという感想が多かったことです。シンプルに見せているのですけど、ヒーロー映画の暴力は怖くないのになぜだろう?という気づきがあったようで、もしかしたら、現実にもこういうことが起きているのかもしれないと書いている子もいて、充分にこちらの意図が伝わっているなと思いました」

参加した中学生には、将来映画の道に進みたいと思っている子もいれば、親の勧めで来てみたという子もいる。この中で出会った何人かは、「将来映画人になる、目が違う」と感じたという。近い将来に、映画の現場で再会するかもしれないことに、西川監督は期待に胸を膨らませているようだ。

【TIFFティーンズ映画教室】中学生が映画制作に挑戦。西川美和は「将来、現場で一緒になるかも」と期待

《杉本穂高》

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